やっぱり卑怯に
現在、間合いは10mで向かい合ってる。
向こうはこちらの出方を見ているようだ。
うん、はっきり言って面倒。
よし、卑怯な手を使おう。そうしよう。
丁度良く中庭なので、『草に足を取られて動きが鈍りますように』と願う。
これで間合いを詰められる事は無いだろう。
「どうした? 来ないならこちらから行くぞ?」
「どうぞお好きに。と言っても、もう無理ですけどね」
「もう無理? 何を言ってる? 女だからと甘く見るなよ?」
そう言って近寄ろうとするが、それよりも早く俺は従魔を召還した。
ガー・チョロ・シロ・レイ・ヒヨ、そしてトムさん。
従魔でアイさんの周囲を取り囲む。
あっ、ヒヨは俺の肩に乗ってるよ? シロも俺の隣に居るし。
シロはすぐに近衛アリを3匹呼び出した。
今回は、指示をヒヨにさせようと思う。
なので、ヒヨをシロに渡して指示を出させた。シロじゃないと、近衛アリは言う事聞かないからね。
「ヒットアンドアウェイにゃ! 必ず2匹で動くにゃ! 前後がペアになるにゃ!」
おっと、教育の賜物か。結構嫌な戦法を使うじゃないか。
前後からの同時攻撃では対応が難しい。出来たとしてもすぐに左右から攻められる。
シロは指示を出した後、ヒヨをなぜている。気に入ったのかな?
「ちょ、ちょっと! 従魔を使うなんて卑怯だぞ!」
「ルールに『従魔はダメ』ってありませんでした~。卑怯じゃありませ~ん」
「それにココは足が草で滑る! 場所を替えてくれ!」
「そこにスタンバイしたのは貴方です~。今頃替えろって言っても遅いです~」
「ぬあー! 男なら正々堂々と勝負しろー!」
「その言い方は男女差別です~。俺は男女平等なんです~。男だからとか女だからとか関係無いです~。
文句があるなら、ジジイにどうぞ~」
「くそっ! くそっ!!」
さて、ここはヒヨとシロに任せて、俺はジジイの所に行く。
「卑怯ですか?」
「いやいや、ルールで決めた事を破ってはおらぬよ。問題無いじゃろ。
それに手加減してくれとるじゃろ? 良い薬じゃ。気絶するまでやらせておけ」
そうなんだ。じゃあ頑張ってもらおう。
俺はシロの所に戻ると、マジックボックスから椅子を出して座って鑑賞する。
シロは俺の膝の上に座ってきた。ヒヨはシロの膝の上。3合体だ!
お茶も取り出して、飲みながら鑑賞。
5分もすると体力が無くなってきたのか、動きが鈍くなってきた。
あっ、チョロに取り付かれた。血を吸われてるな。
チョロが離れると、今度はレイが土壁で囲った。眠らせる気ですね。
これ、全部ヒヨが指示出したのか。優秀になったなぁ。名前を孔明にしようか? 仲達でも良いか?
5分後に土壁が無くなると、そこには寝てるアイさんが居た。
良し、俺の勝ち!
「文句無しで、俺の勝ちですよね?」
「そうじゃな。福田君の勝ちじゃ。末永くよろしくのぉ」
「いや、それは了承してないから。銘菓だけくれ」
「欲が無いのぉ。おい、銘菓を持ってこい!」
控えていた兵士の人が銘菓の詰め合わせを持って来たので、受け取ってマジックボックスに収納する。
その中に入っていた煎餅みたいなのを参加した従魔に1枚づつあげて、帰還させた。
良し、目覚める前に帰ろう!
「じゃあ、これで帰りますんで」
「待て待て。『門のシール』を用意していかんか」
「え~?」
「他の国でもやっておるんじゃろ? 1枚くらい良いではないか」
「……その1枚はそっちで用意してくださいよ」
「ちゃっかりしとるのぉ。ほれ」
「持ってたのかよ! で、どこに貼るんだよ?」
「この板で良かろう。板は儂の私室に置いておくから良いじゃろ?」
「まぁ、それなら……」
『門のシール』を貼って設定したので、今度こそ帰るぞ。
「じゃあ、本当に帰るからな。出口はどっち?」
「また来るが良い。待っておるぞ。帰り道は案内させよう」
案内って、近衛団長にさせるなよ!
すみませんね、すぐに帰りますんで……。




