王の孫娘
「ホッホッホ! 本当に面白い男じゃの! 気に入ったわい!」
「何がですか?」
「普通はの、褒美を取らせると言われたら断らないのじゃ。
断るにしても、適当な理由を付けて断るのだよ。即答はせぬ」
「そ、そうなのですか……」
「ああ、もうよい。そんなに畏まるな。敬語なんぞ要らんわ。
後、儂の事も好きに呼ぶが良い。ホッホッホ、久々に良い気分じゃて!」
何がツボに入ったのだろうか。
一人で盛り上がっている。
「さて、これで帰したら、儂の面目が無いわい。何か褒美を取らせよう。絶対に」
「いや、要らないってば。じいさんよ」
「ホッホッホ、早速敬語を止めるか。面白い! 良し、儂の孫を褒美として与えよう!」
「要らんわっ!」
「儂に似て、可愛い娘じゃよ?」
「だったらその孫が可哀相だわ!」
「なら、似ているか見てもらおうではないか。おい、呼んでこい」
あっ! 上手い事連れてくる流れにしたな!
本当にこのじいさん、策略家だわ。そしてウザい。
孫が来るまでに逃げようと思ってたのに、呼びに行って1分で連れてきたよ……。
どうなってんだ?
「お爺様、お呼びでしょうか?」
「おう、来たか。早かったの」
「呼ばれると思い、隣の部屋に居ましたので」
「そうかそうか」
どこがじいさんに似てるんだよ。
年は20歳くらいか。可愛いと言うより綺麗って感じの娘だ。
腰くらいまであるロングヘアーで、清楚ながらも活発そう。
「儂の孫のアイじゃ。こちらは福田君。お前の旦那じゃよ」
「違うよ?!」
「私の旦那になる人は文武両道でなければ許しません。そこはどうなのですか?」
「大丈夫じゃ。問題無い。外交官をするほどの人物じゃぞ?」
「俺の話も聞こうよ!」
「なるほど。では武の方はどうでしょうか?」
「儂が見た所、かなりのやり手じゃぞ?」
「無視するなよ!」
「では、私と模擬戦をしてもらいましょう。私に負けるようでは話になりませんからね」
「良かろう。負けて悔しがるが良いわ。ホッホッホ」
「勝手に決めるな、ジジイ!!」
「さて、福田さんでしたか。まさか女性との模擬戦を断ったりしませんよね?
女性に負けるのがイヤでしたら、今の内に逃げる事をオススメ致しますわ。
私は寛大ですので、言いふらしたりしませんよ」
カッチーンと来たね。
確かにジジイの孫だ。策略家だ。
だが、これくらいで勝負をしたりしない……
「そうですね。万が一勝てたら、この国の銘菓の詰め合わせを差し上げましょう」
「しょうがない。そこまで言われるのならやりましょうか」
はっ!
思わず乗ってしまった!
銘菓詰め合わせなんて魅力的な事を言うから!
クソッ! ジジイも孫もニヤニヤしてやがる!
「言質は取りましたわ。では、中庭で行いましょう。お爺様、それで宜しいですね」
「そうじゃな。では準備をさせよう」
もう逃げられないようだ……。
しょうがない。怪我をさせない程度に頑張ろう。
いや、待てよ? わざと負けるのもアリか?
ん~、そういうのは見破られるか。ならば引き分けにするか?
どうしようかな?
そんな事を考えてたら、いつの間にか準備が出来ていた。
そのまま中庭に連れて行かれ、着替えさせられた。
お互い、武器は木剣で皮の鎧のようなのを着ている。
「魔法は無し。どちらかが降参するか気絶するまで行う。急所への攻撃や致死の攻撃はNGじゃ。
審判は近衛団長が行う。指示に従うように。双方良いな? それでは始め!」
何も決めてないのに、始まってしまった!
う~ん、どうしよう?




