外交官
今回の件が落ち着いたら島へ招待する事が決定した。
まぁ、国を動かす代金だと思えば安い物だろう。
「では、福田君。親書をロッツギルへ持って行ってくれたまえ」
「はぁ?! 何で俺が?!」
「発起人でもあるし、何よりも王と顔を合わせておいた方が良いからだ。
王族と顔見知りになっておいて損は無いぞ?」
「そうかな?
ニーベル国では色々と頼まれ事されたし、ノートルダムは無茶してきたし、コルラド国では模擬戦させられた。
損もあるぞ?」
そう言うと、2国の王はさっと目を逸らした。
コルラド国だけは、当たり前じゃないかという顔をしている。
いや、お前の国が一番やっかいだからね!
「ロッツギルの王は結構な年だが、落ち着いていて聡明な王だ。
仲良くして損は無いって!」
「何かそれを聞くとさ、貴方達は落ち着きが無い浅慮な王みたいに感じるね」
「そんな事はないぞ! あの王が落ち着きすぎなだけだ!」
「そうそう! 全然動じないもんな!」
「模擬戦をやろうと挑発しても乗ってこなかったし」
へ~。
とりあえず変な王ではない事は判った。
親書を運ぶくらいはするか。
「で、どうやって行けば良いんです?」
「国の『門のシール』を使って行くのが一番早いぞ」
「それ以外では?」
「後はコルラド国から船で行くのが早いが1週間はかかるぞ?」
「国の『門のシール』を使ったら何日かかるんです?」
「使用許可に1日。相手国に許可を取るのに1日だから、2日間だな」
「じゃあ、それで行きますよ」
「うむ。帰りも使うかね?」
「帰りは海から帰りますので、使いません」
「ではそのように通達しよう」
折角ロッツギルまで行ったのだから、どこかに『門のシール』を設置して帰りたい。
ただの往復ではそんな事出来ないからね。
「じゃあ、帰って準備しますよ」
「おう。当然外交官なのだから、武装して来ないように」
「判ってますよ」
「それと、当然だが、一人で行くのだぞ?」
「えっ?! マジ?!」
「当たり前だ。国の『門のシール』を通れるのは1回に1人という決まりがある」
「そうですか……ま、いいか。判りました」
どうやら、この世界に来てからの初めての一人旅になりそうだ。
と言っても、宿でも取れば、そこから家には帰れるのだが。
俺は一旦自宅に戻り、皆に報告した。
今日から国の外交官として、少し勉強しなきゃならない事。
その為に城に泊まりになる事。
2日後にロッツギルに外交をしに行く事。
その後、ロッツギルを探索してから帰る事。
「ずるい! 私もロッツギルに行ってみたい!」
「ちょっと護衛無しで歩かれるのは困りますね」
「そう言われても、一人しか行く事が出来ないんだよ?」
「向こうに着いたら、どこかから『コネクト』で繋げてくれれば良いじゃない!」
「密入国する気か?」
「何を今更……」
「……そう言われるとそうだな。じゃあ良いか。それで行こう」
「やった!」
「じゃあ向こうに着いたら戻ってくるよ。
あっと、カンダさん。悪いけど、タルーンさんの所に行って、防具を受け取っておいて」
「判りました」
これでOKかな?
じゃあ、城に戻るとしよう。




