サミット
戦争というか紛争というか侵略を止めるのは、俺には不可能。
こういう国の事は国に任せたら良いじゃないか。
という事で、王族に知り合いの居る国に話しを持っていこうと考えている。
俺が知ってるのは、ニーベル国・ノートルダム・コルラド国の3国。
その内2国は聖王国の隣国なので、影響力は大きいと思う。
個別に話をするのは面倒なので、中心のニーベル国に集めた。
ノートルダムもニーベル国も入城は自由なので簡単。
コルラド国は書状を見せたら入れたが、『門のシール』が無いので移動が面倒。
結局、ニーベル国から通達を出して来てもらった。
3カ国首脳会議みたいになってしまった。
サミットってやつか?
何故か俺が議長みたいになってるが。
俺は現状を説明した。
それに付け加えて、あの辺りの成り立ちも説明しておいた。
何で知ってるのかと聞かれたので、オークション関係ですと答えたら納得してもらえた。
王はオークションを知ってるからね。
「そういう事が起きている事は把握してたが、まさか始まりはそうだったとはね。
さて、福田君はどういう形が良いと考えてるのかね?」
「聖王国が正式にクイールはロッツギルの領土だと認めるのが一番なんですが、無理でしょうね」
「まぁ無理だろう。そんな簡単に認めるなら、紛争なんぞ起きんわい」
「って事で、認めなくても良いので、攻め込まないように外交で圧力をかけたら良いと思います」
「同感だ」
ニーベル国王は同じ考えらしい。
「どんな圧力を考えている?」
「ノートルダムは隣国では無いので、魔法を教えないというのはどうでしょう?」
「上級以外はもう知っているな。では、これから出来る新しい魔法を教えない方向で行こう」
「それって圧力になりますか?」
「当然なる。もし戦争になった場合、魔法を多彩な方が有利だからね」
「なるほど。ではそれで行きましょう」
ノートルダムはやはり魔法で圧力だ。
「ではワシの国はどうする? 国境に兵でも集めて威嚇するか?」
「いえいえ。そんな物騒な事はNGです!
ニーベル国と一緒に物資を流さないというのはどうですか?」
「軽くないか? やはり力押しの方が……」
「大丈夫ですよ! 効きますから!」
「根拠は?」
「あの国の隣国は、ロッツギル・グランザム・ニーベル・コルラドの4国ですよね?
ロッツギルは敵国なので、ニーベルとコルラドが物資を止めると、相手はグランザムだけになります。
聖王国とグランザムの仲は?」
「悪いな」
「では頼みにくいですよね? それに聞いた話だと、今のグランザムは外交で攻めているとか。
ならば、そんな状態で物資を頼めば、見返りに領土を取られても不思議じゃないですよね?」
「なるほどな」
何でコルラドは力押しをしたがるのだろう。
これだから変態の実力主義の国はヤダねぇ。
しかし、ここでニーベル国王から待ったがかかった。
「今言った状態になった場合、グランザムだけが得をするのではないか?」
「その可能性もありますね。ただ、現在のサイラス国はどうですか?」
「……福田君、よく考えてるな。知っていたか」
「ええ。あの一件以来荒れているとか」
「そうだ。国王がいきなり行方不明になったからな。国の中は後継者選びで大荒れだよ。
その隙を見て、グランザムは領土を広げる算段をしている。
今、ダヒュテムに深く係わるヒマは無いだろうな」
「なので、今なら大丈夫だと思いますよ?」
「よかろう。では我々3国の署名入りの親書を、グランザムとロッツギルには送るとしよう。
そしてダヒュテムには我々3国の署名入りの警告文を送ろう。御二方もそれでよろしいか?」
「「同意します」」
「お願いします」
いやいや、これで肩の荷が下りたよ。
勇者を利用して攻め取ろうとはしなくなるだろう。
これでもするなら、国には物資が入らなくなり疲弊するからね。
「ところで福田君。我々のメリットは何かな?」
「はい?」
「ノートルダム国王に聞いたよ? 島を持っているとか?」
「うっ、ま、まぁ、持ってますけど……」
「招待してくれるよね?」
「わ、判りましたよ……」
さすが腐っても国王か!
俺とまで外交してくるとは!




