ダンジョン移動計画
「見~た~ぞ~」
「はっ!」
「皆に報告しなきゃ!」
「待って!」
ナグラさんは走り去っていった。
俺がルシファーさんと会話をしている所を見つかってたようだ。
バレてしまった! 追いかけるが、既にナグラさんの姿は無かった……。
諦めて皆の所に行くと、俺の仲間の女性が集まっていた。
聞けば、どうやら俺の講義の時間になってたようで、呼びに来たんだってさ。
「そうか……じゃあ講義に行こうかな……」
「何を言ってるっスか?」
ガシッとコタニさんに肩を掴まれた……。
ちっ、やっぱり誤魔化されないか!
「ナグラさんに聞きました。スイーツのダンジョンを無くすそうで……」
「ちちち、違うよ?! 無くなったら困るだろうから、移動させようって話なんだよ?!」
「本当ですか?」
「本当です! 真実です! 間違い無いです!」
キジマさんが恐ろしい。
カンダさんよ、よく結婚したね。
あっ、よく見ればカンダさんは勇者君と隅で体育座りしてる。
助けろよ!と視線を送ったら、目を逸らされた。
勇者君は若干震えているように見える。
そういえば、君の周りはチヤホヤしてくれる女性ばかりだもんな。
一つ大人になったね。
「はいはい、福田さん。現実逃避しな~い! どこに移動させるのかな?」
「いや、そりゃニーベル国でしょ。なんだかんだで世話になってるし」
「そうだよね! やるじゃん!」
「そう? 場所的にはミノタウロスの山の近くかな~って考えてるんだ。それならあまり移動しないしさ」
「何言ってんの?」
「えっ?」
「な・ん・で、そんな遠くに移動させるのか、って聞いてるんだけど?」
「いや、あの、だから……あまり移動させないように……」
「何だって?! 聞こえないなぁ」
「……よく考えたら、自宅から遠いよね! もっと近い方が便利だよね! ね!」
「そうよね。福田さんならそう言うと思ってたわ」
俺が意見を出すから恐怖の反対が出るのだ。
皆に考えてもらおう。どこでも良いよ、好きにして。
「皆の意見を参考にしようかな~、って思ってたんだよ。うん、そう」
「王都の近くはどうっスか?」
「王都の周辺には保安の為にもダンジョンは無いのです。さすがにマズいですね」
「そうなのか~。じゃあカジノの町の近くもダメ?」
「あのくらいの都市になると、やはりダメでしょうね」
「そうなんでスか。この島はどうっスか?」
「独占はマズくない?」
「そうですね。暴動が起きますよ」
スイーツで暴動……。
なんと恐ろしい世界だろうか。
「話をまとめると『私達の生活場所近くで、王都とカジノの町からある程度離れているニーベル国内』ですね。
はい、福田さん。意見は出しました。決めてください」
なんという無茶振り!
地図も無いのに、そんなの決定するのか?!
そうだ! 地図を知ってる男がいるじゃないか! カンダさんだ!
そう思って勇者君の方を見たら、既に居なくなってた……。
裏切り者め!!
どこか、良い場所は無いか? 俺が知ってる所?
ノートルダムとの国境付近? いや、遠いな。『門のシール』も設置してないし。
ん? 『門のシール』? それだ!
「判りました。決めました」
「どこにするの?」
「オオキの村の近くにします!」
「オオキの村?」
「ナミちゃんの家の在る村っス」
「賛成! 良い考えね!」
「そこならカジノの町から半日で行けますし」
「ナミちゃんも喜ぶっス!」
良かった。納得してもらえた。
間違い無く凄く賑わうだろうから、ウエダさんの店も繁盛するだろう。
この世界に来て最初に親切にしてくれた人だ。
感謝してるので、これで少しは恩返しになるかな?




