神の道具
結局、玄関に集まってもらったのにまた『転移の間』へ。
あっ、『転移の間』ってのはナグラさん命名なんだ。
『門のシール』を貼ったベッドもあるしマーカーもあるから、って名付けられた。
結構、かっこよくて気に入ってる。
ただ、俺の部屋に『イチゴの間』って名前を付けるのは止めてもらいたい。
イチゴが好きだからって、それは無いでしょ。
説明するのも面倒だったので、さっさと認証させて島へ移動して俺の家に向かってもらった。
俺だけすぐ戻り、今度は王都の家へ行きカンダさんと勇者君を連れて戻る。
これまた説明せずに認証させて、島へ。
家に連れて行き、ご対面となりました。
全員の無事を喜び合ってる中、悪いけど少しだけ話をしよう。
「さて、全員揃ったね。勇者君には詳しく話をしてあるんだけど、皆にも少しだけ話をしようと思う」
「あの……」
「なんだい?」
「勇者君は止めて下さい……」
「あぁ、ゴメンゴメン。吉田君だったね」
「……やっぱり知ってるんですね」
「そりゃそうさ。あっ、正体については内緒ね?」
「判っています」
うんうん。スサノオなんて君の勘違いだから、誰にも言わないようにね。
バレたら俺が恥ずかしいし、なにより本物が居たら苦情が来るかもしれないから!
「君達は魔王を退治しに行く。OK?」
「はい。ただ、退治しに行くっていう言い方は止めてもらえますか?
なんか、桃太郎みたいですので……」
「似たような物だと思うけどなぁ。まあいいや。
そこで、俺が協力する事になった。これは勇者君、吉田君と話して決めた事。OK?」
「「「いつの間にそんな話を?!」」」
あ~、女性達よ、息合わせて言わなくてもいいから。
その辺は後で勇者君に聞いてくれ。
「はいはい。聞いて~。
そこで、勇、いや吉田君には、スーパーでスペシャルでハイクオリティでゴージャスなアイテムを貸し出します!
はい、拍手!!」
パチパチパチ
俺の仲間しか拍手してくれない。
お前達、ノリが悪いな! 本当に日本人か?
「このアイテムは、え~と、きゅ、いや、あく、いやいや、そう、『吸魔の腕輪』です!」
「今、考えませんでしたか?」
「ソンナコトナイヨ?」
冷静だな!
小嶋だったっけ? そんな所を気にするな!
「これを装備して魔王の前に立ち、起動する言葉を言うと魔王を吸い込んでしまうというアイテムだ!」
「孫悟空のパクりですか?」
小嶋! うるさいよ!
腹立たしいので、こいつも巻き込んでやろう。
何か良い物が無かったかな?
う~ん、良さそうな物が無いなぁ。適当でいいか。
「そして、これを動かすには3つの補助アイテムが必要なのだが、一人が一つしか持てないのだ!
幸いにして君達は4人組。女の子が補助アイテムを持てば、万事解決! みんなハッピー!」
「都合が良すぎる気がします……」
「この娘はそんな事を言ってるが、吉田君はどう思う?」
「助かります。ありがとうございます」
「まぁ、吉田君がそう言うなら……」
腹立つわ~。俺が言う事は信用出来ないのかよ。
まぁ、わざと胡散臭い喋り方してるけどさ。
だが、これからが君達の苦難なのだよ!
「では、吉田君には腕輪を貸そう」
「ありがとうございます!」
吉田君は銀色に鈍く輝く腕輪を、俺から両手で受け取った。
いいね、君は素直で良い。おじさん、応援しちゃうよ。
「では、次に補助アイテムを渡そう。
まずは、小嶋さんだったね? 君からだ。譲渡出来ないし、一つしか無いから大事にしろよ?」
「はぁ、判りました……ってこれ、お玉じゃないですか!」
「三種の神器だよ!」
「それは、玉は玉でも勾玉でしょ! 料理に使うお玉じゃないでしょ!」
「次は、渡辺さん。君はこれだ!」
「ちょっと! 無視しないでください!」
「あの~、フライパンに見えるんですけど……」
「鏡だね! 八咫鏡ってやつだ!」
「いや、フライパン……」
「最後に藤崎さん。君はコレ!」
「その流れだと、草那芸之大刀だと思うんですが、これは菜箸ですよね……」
「君は詳しいね! 正解だ!」
「「「料理道具じゃないですか!!」」」
違うって。三種の神器だよ。
効果は無いけどさ。
力を合わせて最終兵器を使う時に、3人で掲げてくれよ。
あぁ、どうにかして録画したい!
「あの~、三種の神器は良いんですが、起動の言葉とは?」
「あぁ、教えてなかったね。普通の言葉だと日常で言ってしまうかもしれないから、少し複雑にしたよ。
しっかり覚えてくれ」
「はい! 判りました!」
「良し! では。『ゲームセンター○X、課長ON!』だ!」
「……は?」




