魔王の魔は悪魔の魔
「魔王だよ、魔王。魔王って何なの?」
「えっと……魔族の王ではないんですか?」
「魔族なんて種族はこの世界には居ないよ?」
「他の世界から来たのでは?」
「召還みたいに? 神の権限が無けりゃ無理だよ」
「えっと、えっと……では、魔物の王?」
「魔物も居ませーん。居るのはダンジョンのモンスターくらいだよ」
「ではモンスターの王では?」
「そもそも、ダンジョンはこの世界の不作を補う為に作ったの。
“モンスターを倒すとドロップする”という手を使ってね。
ちなみに、この不作ってのも堕天使がした失敗の一つね。
あっ、これらは内緒だよ。オフレコでね!」
「はっ、はぁ……判りました。内緒にします」
「で、話を戻すけど、だからモンスターの王ってのも無いよ。
それにそれだと、魔王じゃなくてモンスター王でしょ?」
「そ、そうですね」
「他に“魔”の付くのってないの?」
「後は……悪魔ですか?」
「悪魔ねぇ……悪魔の由来を知ってる?」
「あっ、漫画で読んだ事あります。元は天使だった……と……か。あっ!」
やっと正解にたどり着いたか。
細かく誘導して良かった。
でも悪魔の由来を良く知ってたね。助かったよ。
漫画の知識とは思わなかったけどさ。
「そう。悪魔って堕天使の事さ。
じゃあ、今、この世界に居る魔王、堕天使の王って誰だろうね?」
「もしかして?!」
「そう。私達が調べた所だと、今居る魔王はアイツさ。君達をこの世界に誘拐したヤツ」
「あっ、あっ……」
「ほら、色々繋がっただろ?
1.地上に逃げて堕天使になった。
2.神の力は持っている。
3.神は人間に干渉しない。“神は”ね。
4.魔王、つまり悪魔とは、堕天使の事。
ここまで来れば、何があったか判るよね」
「はい……オレ、いやオレ達は、悪魔に騙されたんですね……」
「正解! で、普通は無視するんだけどね。
君達の世界の仏に頼まれてねぇ、救いに来たんだよ」
「仏……様……ですか?」
「そう。と言っても、佐藤○朗さんに頼まれたんじゃないからね?!」
「……何を言ってるのですか?」
漫画読んでるなら、ドラマも見なさいよ!
高校生なんだから、深夜のドラマでも見るだろ!
それともお前は深夜アニメ派なの?!
とにかく、大体理解してもらえたようなので、座ってもらおう。
実はずっと畳じゃない所に立っていたのだ、この子。
神って名乗ってるからか、上がらないんだよね。
「今は混乱してるだろ。落ち着く為にお茶でも飲め。な?
上がって座りなさい。今、お茶出すから。あっ、お茶請けはどら焼きで良い?」
「えっ? あっ、はい。し、失礼します……」
番茶とどら焼きを出してあげた。
「このどら焼き、何とこのダンジョンの3階でオーガを倒すと手に入るんですよ!
しかも、今だけ! 1匹で2個貰えるんです!」
「……何でテレビショッピングっぽく言うんですか?」
「君! ボケたらつっこむ! 日本人だろ!」
「あの……そんなにお笑いを見ないので……」
嘆かわしい! 本当に高校生か?!
お前、普段何してるんだよ?!
まぁ、座ってお茶も飲んでる事だし、さすがにもう攻撃はしてこないだろう。
3人攫った上に、神なんて胡散臭い事言ってるんだもん。攻撃くらい警戒してたさ。
安全になったって事で、カンダさんとトムさんも呼ぼう。
「だだだだだだ、誰ですか?! それにモンスターが!!」
「あぁ、慌てない。こちらはカンダさん。私の護衛だ。
こちらのケンタウロスはトムさん。君が暴れた場合、君を捕縛してプレゼントする予定の相手だ」
「プ、プレゼント?」
「トムさんはね、ゲイなんだよ」
「言わなくても良いでしょ!!」
「すみません。疑ってません。神様、どうかお許しを。貴方様を完全に信じております」
突然、土下座をされた。
トムさんに襲われるのを想像したのだろうか?
勇者との会話が長くなってすみません…。




