最後の勇者到着!
俺は一人で7階に待機している。
いきなり攻撃してこないように作戦も練ってあるので、一人でも心配無い。
ガーも回収したし、いつでも来るが良いわ!
な~んて思ってたら、案外早くやってきた。
走り回ったのだろう、肩で息をしているし汗だくだ。
だが、俺を見るなり、驚いた顔をした。作戦通りだ。
「貴方は誰ですか?! ここは日本じゃないですよね?!」
ほら、混乱しだした。
何故混乱してるのかと言えば、俺は7階の中心に畳を並べてちゃぶ台を出してお茶を飲んでるからだ。
これを見て襲い掛かってくる日本人は居ないだろう?
よし、さらに混乱させてやろう。
「あたしゃ、神様だよぅ」
「は?」
「あたしゃ、神様だよぅ」
「神様なんですか?!」
「何言ってんだぃ! あたしゃ、神様だよぅ」
「だからそう言ってるじゃないですか!」
「えっ?」
「えっ?」
「えっ? えっ?」
「えっ? えっ?」
「えっ? えっ? えっ?」
「えっ? って、もう良いですから!」
「ちぇっ。もうちょっと付き合ってくれても良いのに」
ド○フを知らないのか?
「私も神様だよぅ」って言って欲しかった。
まぁ、掴みはOKだ。真面目に話をしようか。
「ボケはこれくらいにして、ちゃんと話をしよう。
私は神の使いなのだよ。判るかね?」
「では、ダヒュテム様の……」
「シャラーーーーップ! 黙りなさい!」
「えっ……何ですか?」
「あのような神の使いなどと言われるのは不快です。止めて下さい」
「あのような……ですか?」
「聡明な君なら判っているだろう? 私は創造神の使いなのだよ!」
「創造神?」
「君の事は全て知っているよ。趣味嗜好から、エロ本をどこに隠しているか、まで全てだ!」
「本当ですか?!」
「では発表しようか? 君のエロ本の隠し場所は……」
「言わなくていいです! 判りましたから発表しなくていいです!」
本当は何も知らないんだけどね。
自信有りげに喋れば疑われる事は無い。
なんせ混乱の最中だからね。
「では最近の話をしようか。
君は地球から来ていて、この世界の魔王を倒そうと他の3人と共に来ている。違うかね?」
「いえ、合ってます! それで、他の3人が……」
「言わなくても判っている。行方不明だと言うのだろう?
その者達は保護しているから心配しなくて良い」
「……そうですか。安心しました」
おいおい、もう少し考えろよ。
保護しているって事は、俺が捕まえてるって事だぞ?
ある意味人質って可能性もあるんだけどさ。
まぁ、高校生に深読みは無理か。
「さて、君も気になってるだろうから、私がここに居る理由を説明しよう」
「お願いします」
「君は召還されたね」
「はい」
「その時不思議に思っただろう? 『何で魔王を倒すのに自分が必要なのか』と。
そう、賢い君なら疑問に思って当然だ」
「そ、そうですね」
ちょこちょこと、褒めている事にお気づきだろうか?
褒められてイヤな人は居ないだろう。
そして、自分を褒めてくる人を嫌う人も居ないだろう。
だから、褒めながら説明する事で、この人は本当の事を話していると思わせるのだ!
フフフ、徐々に洗脳してやるぜ。
「神ほどの力を持つ者が、何故地上の魔王くらい倒せないのか。
誰でも疑問に思うはずだ。君も当然疑問に思った。違うかい?」
「い、いえ、合ってます。その通りです」
「だが! 相手は神だ。疑問を持っても問う事は無礼になると思い黙っていた。
空手の道場で規律を教えられていた君の事だ、そう思い黙っていた」
「そ、そうなんですよ。失礼ですからね」
「それに相手は神だ。反抗しても勝てる訳が無い。召還出来るなら変な場所に送る事も可能だからね。
君は素早くそこまでを考えて黙っている事を選択した。さすがだね」
「い、いえ、そこまで褒められる事では無いですよ」
乗ってきたな。
こうなると、簡単には覆せないぞ。
今まで自分がそうですと言った事がウソになるからな。
それに俺も神を名乗っている(性格には使いだけど)。
今、暗に「神には勝てないよ」「反抗するとひどい目にあうよ」と教えたし。
さて、追い込もうかね。




