参謀
馬車をギルドの裏手に回して、レイに警戒させる。
この国の宗教で「神を信じていないからと、人を貶める行為をしてはいけない」とあるらしいが、信用してない。
地球だって隣人を愛せみたいな教えがあるのに、他の宗教と戦争するくらいなんだから。
どっちかというと、宗教を信じてる人の方が怖い。
盲目的に行動しそうなんだもん。
だから、怪しい者は近づけないように頼んでおいた。
さて、馬車でいつ来るのか判らない人を待つのは苦痛である。
なので、交代で馬車に居る人を決めて、他の人は王都の家に居る事にした。
悲しいかな、俺達のメンバーは奇数なのである。
カンキジコンビは夫婦なので、一緒にした。
そうなると、女性2人でコンビになる。
そう、俺だけボッチになるんですよ……。
俺は大人なので、それくらいは受け入れるさ。
さ、ヒヨよ、一緒に馬車で待とうね。
ヒマなので、ヒヨの生態調査をする事にした。
少し成長したけど、まだ外に出しても猫と思われるサイズだ。
なので、まずは外で運動能力テストだ。
木登りをさせてみた。
手頃な木が裏手には生えていたので、登らせてみる。
すると、2mくらいまで枝が無いのに、あっという間に登っていった。
うんうん、この辺は猫よりも既に早いな。
元々高い所の暗がりから急襲するタイプのモンスターだもんな。お手の物だろう。
問題点。
降りれなくなっていた……。
猫か、お前は!
褒めてたら頂点まで登っていったのだが、そこで木が重さで撓るとニャーニャー泣き出したんだ。
知らない人はニャーニャーと聞こえるんだが、念話を受ける俺は『ヘルプ!ヘルプ!』と聞こえる。
誰だよ、ヒヨにヘルプとか教えたのは。
結局、飛翔の靴で助けに行った。
ジャンプ力を測ってみた。
どれくらいなら飛び乗れるのか。
馬車の屋根には飛び乗ったので、高さは3mくらいまで飛べるようだ。
今度は水平にどれだけ飛べるのかを試す。
馬車の屋根からギルドの屋根までは3mくらい離れている。
垂直に3m飛べるなら幅もいけるはずだ!
問題点。
水平に飛ぶには助走が必要な事が判った。
馬車の屋根では助走が足りなかったらしく、ギルドの屋根の下で見ていた俺に向かって飛んで来た……。
なんとか受け止めたが、ビビってたのか爪が出ていて痛い! 離せ!
『怖かったニャ! 死ぬかと思ったニャ!』
はい、誰ですか。語尾にニャを付けろと言った人は。
運動能力のテストは俺が大変なので、中止です!
次は知能テスト。
こちらは驚きの結果だった!
最初は記憶力。
まずリンゴを見せる。その後に赤いボールを出して、投げたりして一緒に遊んであげる。
10分後に最初に見せたのは何だったかな?と聞くと、ちゃんとリンゴって答えた!
絶対に夢中になって遊んでたボールって言うと思ったのに!
猫ってバカだと思ってた! まぁ、猫じゃないんだけどさ。
計算も凄い。
基礎を知らなかったので四則演算を教えたら、あっという間に覚えてしまった。
1時間で3ケタの掛け算が出来るようになったのには驚いた。
ドヤ顔をしてるのはムカつくけど。
凄く頭が良い事が判ったので、今は色んな事を教えている所だ。
俺の持っている全ての知識をお前に与えよう、的な?
まあ、自慢出来るほどの知識は無いんですけどね。
それでも、教えただけ覚えていくのは、教える側も面白い。
ついつい余計な事まで教えたくなる。
はっ! だから、誰かが語尾にニャを付けろとか教えたのか?!
しかしなぁ、見た目がバカっぽいんだよなぁ。
今は休憩してるんだが、警戒心ゼロで腹を上にして寝てる。
寝ぼけてるのか、自分の尻尾を前足で持って自分で咬んでるんだよ。
はい、今、痛みで飛び起きました。俺を疑いの目で見てるし。
いや、俺じゃないよ? 自分で咬んだんですよ?
今日、俺は決めた。
この子を、参謀として育てる事を。




