聖王国の冒険者ギルド
3人目でやっとギルドの場所を教えてもらえた。
どうもこの国は、宗教が強くて冒険者は弱いらしい。
冒険者ギルドで行っている業務も教会でやっているそうなのだ。
ちなみに、それを受ける人の事を「戦信者」と言うらしい。
後ろを伸ばして言うと5人組の戦隊みたいだなと思った。
で、冒険者ギルドだが、在る事は在るんだが肩身が狭く、町の端にひっそりとあるようだ。
そうなると、勇者は戦信者の可能性が高い。
だが俺達は所属してないし宗教も信じてないので行きにくい。
なのでとりあえず、冒険者ギルドに行く事にした。
向かっていると、またまた着信が。
見ればウエダさんだ。
「はい。福田です」
「おう。俺だ。俺、俺」
「オレオレ詐欺ですか?」
「何だよ、そのオレオレ詐欺って?!」
「いや、冗談です。どうしたんですか?」
「寝てたら夢に神様が出てきてよ、『貴方は抽選で当たりました。電話という魔法度具をプレゼントします』って言われて。
朝起きたら、本当にあるじゃねぇか! ビックリしたんだよ。
そしたらさ、今度はそれがジリリンと鳴るんだよ!
恐る恐る取ると、相手は王様じゃねぇか! これまたビックリでよ。
話を聞くと、兄ちゃんと連絡がつかないって言うからさ。コレ使って連絡してみたのよ」
あの王め! 絡め手を使ってきたか!
しかも自国民を使うとは、やり方が汚い!
「あぁ、連絡はあったので大丈夫ですよ」
「そうかい! じゃあ良かった! またこっちに寄ってくれよ! じゃあな!」
「ええ、近い内に」
こうしてウエダさんとの会話は終了。
フフフ、ウソは言って無いぞ?
連絡はあったよ? 話をしてないだけで。
うん、段々ムカついてきたな。
良し、じゃあ連絡してあげようじゃないか。
俺はアドレス帳でニーベル国国王を出して電話する。
2回のコールの後、繋がった。
「おう、福田君か」
「あのですね、ゴニョゴニョ……」
「うん? 何を言ってるかよく聞こえないぞ?」
「よく聞いてくださいよ? せーの、わーーーーっ!!」
思いっきりデカい声で言った後、切ってやったわ!
フフフ、こういう使い方は知らなかっただろ?
って、今時日本でもしないだろうけど。今頃耳がキーンとなってるに違いない。
少しは溜飲が下がった。
さっ、冒険者ギルドに行こう。
着いた冒険者ギルドは、本当に寂れていた。
普通の家でも2階建てなのに平屋だし、人の気配も無い。
窓ガラスも割れてるし、そこにテープのような物を貼って直してある。
入り口の扉に「営業中」と貼ってあるのが、また悲しいよね……。
中に入ると、魔法道具の照明も無く、ロウソクが灯してあった。
……来たのは失敗だったかな?
「ようこそ、冒険者ギルドへ……」
うおっ! 人が居たのか!
暗くて受付に人が居るなんて気づかなかったわ。
「私はここのギルドのギルド長です。と言っても、他には誰も居ませんがね……」
暗い! 暗すぎる!
自虐ネタにしても笑えないぞ。
「依頼を出されますか? それとも受けますか? それとも冷やかしですか?」
ヤベぇ。聞きに来ただけなんて言える雰囲気では無い。
かといって、依頼を受ける気も無いし。
しょうがない、依頼として出すとしよう。
「あの、じゃあ、依頼を出します」
「えっ?! 依頼を出すんですか?! 何て奇特な!」
「えっと、帰って良いですか?」
「半年ぶりの依頼だ! どうぞどうぞ、こちらへ!」
半年振りの依頼って事は、受ける依頼なんか無いじゃないか!
依頼を出して、大丈夫なのか?




