国王
「いやいや、城に行くほどヒマは無いから、また今度……」
「大丈夫です! 父もこの町に来ていますから!」
「え~っ!!」
「そのお陰で早く来る事が出来たのですよ」
「どういう事?」
「この港は軍港でもあるので、『門のシール』が設置されているのです」
なるほど。だからすぐに来れるのか。
しかし簡単に使って良い物じゃないだろ?
王様も軽いな!
「という事で、軍港基地までご一緒してください」
「そ、そうですか……。船で行くの?」
「いえ、陸路を進みます。と言っても馬車で10分程ですので」
「りょ、了解。皆も一緒に?」
「ええ、当然ですよ! 一緒にダンジョンを攻略したんですから!」
「ソウデシタネー」
良いよね~、一緒に攻略した仲間って。
俺なんか敵役だよ? しかもラスボス……。
俺達の船は軍が責任持って管理するそうな。
なので、絶対に誰も乗らないようにと強く要望しておいた!
多分弾かれて終わりだと思うのだが、JBSが反撃なんかすれば港が壊滅しても不思議じゃないからなぁ。
で、俺達はモリタ君の用意してた馬車に乗り、軍港基地へ。
入り口ではボディチェックも武器預けも無かった。
聞けば「暗殺なんかに負けるくらいの王は要らない」そうだ。
どれだけ実力主義なんだよ……。武器くらい持ち込み禁止にすれば良いじゃん!
まぁ俺の場合、マジックボックスに入れて持ち込めるけどさ。
案内された部屋のドアをモリタ君が開けると、そこには40代くらいの細いオッサンが居た。
この人が王様か。実力主義だから、ガチムチのオッサンだと思ってたわ。
いや、よく見れば、しっかりと筋肉はついているように見える。細マッチョってやつか?
「よくぞ来てくれた。私がこの国の王で、レッコと言う。よろしく頼む」
いきなり話しかけられたのでビックリした。
慌てて謁見の時にしたポーズをする。
「いやいや、畏まらないでくれ。ただのオッサンだと思ってくれれば良いから」
「そうですか? じゃあ……福田です。よろしくお願いします」
「言っておいてアレだが、本当にすぐ普通にするとは! なかなかやるな!」
「いやぁ、堅苦しいのは苦手なんで。ダメですかね……」
「問題無い。どうせこの部屋には私と息子しか居ないのだから」
話の判る王様だ。
裏表も無さそうに見える。
ただ、何だろう? 目がギラギラしてるのは気のせいだろうか?
「さて、まずは息子に協力してくれたお礼を言いたい」
「いえ、お気になさらず。たまたまですから」
「ふむ。で、此度の来訪の理由は?」
「えっとですね、聖王国に行く予定なんですが、入国の許可を貰いたくて」
「なるほど。君達は宗教を信じているのかね?」
「いいえ? 何故ですか?」
「聖王国に行く者は、大半が商人か信者だからだよ。目的は?」
「あ~、え~と、人探しです」
「……なるほどね。そちらにも事情があるようだ。
では入国許可を出そう」
「えっ? 自分で言うのもアレですけど、そんなに簡単に良いんですか?!」
「問題無いな。私が良いと言えば良いのだ。
文句があるやつは決闘を申し込んでくるだろう。それはそれでありがたい」
「ありがたい?!」
うわっ、戦闘狂だ。
なるべくお近づきになりたくないタイプだわ。
「発行するにあたって、福田君。頼みがあるのだが」
「はぁ。何でしょう? 出来る事であれば……」
「良し。言ったな? では、私と模擬戦をしてくれたまえ」
失敗した! 戦闘狂って判ってたのに!
王様だからって「出来る事であれば」なんて言ったのが失敗だ!
あっ、そうか。
「それは出来ない事に入りますね」
「はっはっはっ、何を今更。もう決定事項だよ。
模擬戦の場所は中庭だ。では移動しようじゃないか」
「モリタ君?!」
「あの~、諦めてください。朝から準備してましたので……」
最初からやる気だったのかよ!
勘弁して欲しいわ……。




