スロット対決!
この大会、出て判ったんだがもう帰りたい。
現在スロット競技が始まっててさ、皆頑張ってスロットを回してる訳よ。
で、俺は作戦でスタートから40分後に始める事になってるんだけど。
何が嫌って、観客が居る事だよ!
そしてニーベル国の応援席!
そこにカンダさん達が居るのは良い。何の問題も無い。
だが! 最前列の集団! 何だその横断幕は!
『頑張れ帝王! ここでも無敵だ! リア充滅びろ!』
まず、帝王って書くな!
対戦相手にグランザム帝国ってのが居るんだぞ?!
帝王って書いたらダメだろ!
次に無敵とか書くなよ。
ギャンブル強いのがバレるだろ?
相手にこちらの事を知られないのが、ギャンブルの基本だろうに。
警戒されるだろうが。
最後に、誰がリア充だ?!
そもそも、横断幕に書く事か?!
わざわざ応援に来て、見せる必要がどこにあるよ?!
知ってるぞ、最前列の集団。お前ら、カジノの町で、いつもコソコソと話してるやつらだろ?
耳を傾けるとまた聞こえるぞ?
「帝王、動かねぇな」「何か狙ってるんだろ?」「動いた時が勝負の時だぜ」
「じゃあ、今は何をやってるんだろ?」「情報収集じゃね?」「確かにチラチラと周辺を見てるな」
「あれって、本当に情報収集かな?」「確かに、観客席を見てるな」「女を物色してんじゃね?」
「くっ、また毒牙にかけるつもりか?!」「くそっ、リア充め!」「負けてしまえ!」「もげろ!」
ムカつくわー。
今度カジノの町で出会ったら、運を使ってでも勝負に持ち込んでやろう。
で、逆さにしても1円も出てこないようになるまで、吸い上げてやろうかな。
大体、毒牙って何だよ! いつ、俺が、誰かを毒牙にかけたよ?!
風評被害だ!
「福田君! 時間です!」
おっと、ムカついてたら、時間になってしまった。
『大当たりしますように』と願いながらコインを1枚入れて、スロットのレバーを引く。
ぐ~るぐ~る、タンタンタンタンタン。
パッパラ~!
はい、7が5つ揃いました。
カッチャン、カッチャンと、1回にコインが5枚づつ出てくる。
……えっ? この速度で排出されるの?!
そりゃ5分もかかるわ!
頑張ってコインを箱に入れていると、ヨウジさんがこちらにやってきた。
「さすがだね! こうなったら作戦変更だ! 福田君の凄さを見せつけよう!」
「は? いや、あまり目立つのは……」
「何を言ってるんだい! 負けたら困るだろ?!」
「いや、負けないように出来ますし……」
この状態で運を使えば、他のチームは当たらなくなると思うんだ。
そうすれば時間切れで俺達の勝ちになる。
だが、説明出来ないんだよな~。
「大体、何をするつもりなんですか?」
「簡単だよ! 全員をここに集めて、1人1台占領する。
で、残りの4台を福田君に回してもらうのさ!
うまくいけば、もう1台くらいは当たるんじゃないか?!」
「あぁ、そういう作戦ですか。それなら良いですよ」
「良し! 早速実行だ!」
という事で、横並びにうちのチームが揃った。
俺はアドバイスをする振りをしながら、各人のスロットを回す。
ぐ~るぐ~る、タンタンタンタンタン。
パッパラ~!
はい、全員フィーバーです。
ククク、これで、俺が当てたとは気づくまい。
な~んて思ってたけど、会場にあるデカいモニターに俺が回してたのが映されてました……。




