断れないタイプってさ
「ちょっと、ルウ! 何を言い出すのよ!」
「だって僕達は弱いじゃないか! 強くなるには助けが必要だって言われたでしょ!
目の前に居る人達はレベルが高いじゃないか! 助けを求めるのがおかしいかい?!」
そう言われてリナ(だったっけ?)はまた下を向いてしまった。
現実を言われたのが悔しいのだろう。
ルウは再度こちらを向き、同じ事を言ってきた。
困るのは俺達。
ナグラさんはオロオロして、キジマさんはため息を付いている。
俺は思考中だ。
助けるとしてだ、メリットは良い事をしたという気分になる。デメリットは時間のロス。後は姉がウザい。
助けないとすると、メリットは時間を取られない。デメリットは見捨てた気分になる。
では、この両方の中間を取るとしよう。
「君達を鍛えるとしてだ……」
そう言っただけで、ルウはパッとにこやかな顔になる。
が、世の中そんなに甘くないんだよ。
そんな甘さが許されるのはラノベの中だけだぞ?
ラノベの主人公はメリットが無くても助けるし、頼まれると断れないタイプばかりだからな。
俺は違うよ? 面倒なら助けないし、頼まれても嫌な事は断る。
あっ、王様の頼みとかは別枠だよ?
国単位での面倒事になる可能性もあるから。
当然、報酬はもらうけど。
大体さ、頼まれたら断れないヤツって頭がおかしいと思うぞ。
しかも見返りを求めないなんて人間じゃないね。
アホなのか、聖人なのか、どちらかだろ。
神とか天使とは言わないよ? 知ってるから。
そういうタイプの主人公の出る話って、途中で読むのを止めちゃうんだよなぁ。イライラするんだ。
そのくせ巻き込まれ体質とか言うんだもん。自分から進んで巻き込まれに行ってるんだよ!
おっと、話が逸れた。
さて、現実を突きつけようか。
「……俺達への報酬は?」
「えっ?」
「俺達に鍛えてもらう。つまり、俺達を雇うって事だよな。
学校に行かずに家庭教師を雇うようなもんだろ?
じゃあ、当然報酬が発生するよね」
「そんな……報酬なんて、無理です」
「ちょっと! 初心者が頼んでるのよ!
報酬とか無理に決まってるじゃない! 貴方達は稼いでるのでしょ!」
「おいおい、おかしいだろ?
お金持ってる者は無料奉仕が義務なのか?
じゃあ、お前達は物乞いをしてる人に無料で奉仕するのか?
そういうのはな、見返りを求めない宗教とかに言ってくれよ。
冒険者は依頼を受けて、それをこなして収入を得る。そうだろ?」
「そうだけど……」
リナの言葉にナグラさんは困っている。
多分、心情的には助けたいんだろう。年も近いから共感出来るのかも。
対してキジマさんは落ち着いている。
今は俺の護衛って仕事をしてるが、元は冒険者だ(今でもだけど)。
俺の言ってる事に間違いが無いので、何も言わないんだろう。
俺はため息を一つ付いて、折衷案を出す。
「じゃあこうしよう。
さすがに死なれたら後味が悪いので、1階へ上がる階段までは送ってやるよ。
その後、冒険者ギルドにでも行って、そこで鍛えてもらえ」
「何それ!」
「リナだっけ? お前はもう少し考えろ。
1階に行くまでは無料で護衛してやるって言ってるんだぞ?
それとも報酬を払うのか?
後、ルウだっけ? お前は考えてるようだけど、安直過ぎる。
タダで楽をしようとするなよ。ギルドでも鍛えてもらえるだろ。多分」
「……」
「そ、そうですね……すみませんでした」
うん、弟の方が素直で良い。
姉は考え無しだな。強気なのは前衛としては良いけど、過ぎればただの自殺願望にしか見えない。
残念だな、俺はハーレム希望じゃないから助けないよ?
本音を言えば、、、
鍛え方なんか知るか!
俺は運だけでココまで来たんじゃ!
まあ、これは言った所で、ね。
あまりにも可哀想なので、1階に行くまでに弟には少し助言をしてあげた。
「罠を作れ」「姑息に戦え」「姉だろうと使える者は使え」「自分の年齢や容姿も駆使しろ」
「卑怯な手だろうと勝てば良い」「頭を動かし口を使え。腕力に頼るのは一番最後」などなど。
……ある意味、どう成長するか楽しみかも?




