強者?
彼らの武器は少しも汚れていない。
どうやら俺達の後ろを付いてきてたので、戦闘をしなかったんだと思う。
それにしてもこんなに若いのに、レベル20は必要な2階に進めるほどのレベル持ちなのか。凄いな。
だが、それにしては無警戒のような……。
引き返してきた俺達を不審に思ったのか、女の子が大声を出す。
「何の用よ?」
「いや、モンスターに囲まれてるけど、大丈夫なのかなと思って」
「誰が囲まれてるのよ! どこにも居ないじゃないの!」
あれっ? 気づいてないぞ?
あっ、あれか。不意打ちでも対応出来るんだ。
「いや、大丈夫なら良いんだ」
「何言ってるのよ、この人。素人なのかしら」
女の子に素人扱いされた……。やっぱり強者のようだ。
じゃあ、戦闘を見学させてもらおう。
強い人の戦い方って参考になるもんな。
離れた所から見てると、まず空からウミドリが襲ってきた。
それと同時に海からアイアンタートルが出てくる。
背中にはフジツボが付いているようだ。
この階のモンスターがそろい踏みじゃないか!
2人でどうやって戦うんだろうか?
装備から考えると、女の子が前衛でアタッカー、男の子が後衛で魔法使いだと思う。
女の子はアイアンタートルに目が行ってる。
って事は、ウミドリは男の子が相手をするのかな? って、男の子もアイアンタートルを見てるじゃないか!
ウミドリの奇襲はどうするんだよ?!
それに気づいたのか、ナグラさんが『駿歩』を使い走っていった。
それをキジマさんも追っている。どうやら2人とも助けるようだ。
これ、俺だけ眺めてたら悪役だよな……。
しょうがない、俺も参戦しますか。 シジミ欲しいしね。
ウミドリが女の子の剣を取ろうとした瞬間、ナグラさんの攻撃がウミドリにヒットする。
ウミドリはよろめいて地面に落ちかけるが、立て直してまた空に上がっていった。
女の子は何があったのか判らないのかポカーンとしている。
男の子はアイアンタートルにファイヤーアローを打ち出した。
だが、背中のフジツボが酸を噴出してファイヤーアローを相殺した。
そんな事になるとは思っていなかったのか、男の子も呆然としている。
そこにアイアンタートルが体当たりをしようと飛ぶが、それはキジマさんに弾き飛ばされた。
ここまでが、俺が到着するまでの出来事です。
はい。まだ参戦していませんよ。何か?
女の子は正気に戻ったのか、俺をにらみつけてくる。
「ちょっと! 邪魔をしないでよ!」
「いや、邪魔しなかったら、お前達大変な事になってただろ?」
「大丈夫よ! バカにしないで!」
えー、そうかなぁ。
女の子はウミドリに剣を取られて、男の子はアイアンタートルの体当たりを食らってたと思うけど。
とにかく話を聞く為に、このモンスター達は排除しよう。
「ナグラさんはそのままウミドリを! 俺はアイアンタートルをやる! キジマさんはフォローをお願い!」
「判ったわ」
「判りました」
「何を勝手に仕切ってるのよ!」
女の子は無視だ。
アイアンタートルは硬そうだけど、火に弱そう。
だって、鉄板を着てるようなものだろ? 甲羅を熱すれば死ぬんじゃない?
って事で、毎度おなじみの『ピットフォール』で穴に落とす。
で、穴の中に『ファイヤーウォール』を使う。
すると穴の中が火の海になった。
直線的なファイヤーアローと違い、これはなかなか消せないだろ。
ついでに穴の中に『ファイヤーアロー』も打ち込む。
意味は無いかもしれないが、飛び出そうとしてるなら邪魔出来るんじゃないか?
少しして火が消えたら、穴の中にはモンスターはいなかった。
逃げたかと思ったが、中にドロップ品があったので倒したんだろう。
横を見れば、ナグラさんが1本の鳥の羽を持って立っていた。
聞けば投げナイフ1発で倒したそうだ。怖い。
さて、これで話が出来そうだ。




