ダメ人間製造
「素晴らしい場所だった。もう、あの島に住みたい……」
王族のヨウジさんが不穏な事を言いだした。
あんた次期国王でしょうが。
まぁ、国王候補だからこそ、逃れたい重責などがあるんだろうけど。
島に入り浸りダメ人間になられても困るので、しばらく島は封印しよう。
皆もその意見には賛成してくれた。
俺達が行くとなると、付いて来るだろうから。
反対したのは、当然ヨウジさんとライドウさん。
「反対するなら、今後行けなくなる可能性がありますよ?」
この一言で静かになったけどさ。
強引だが、ここは所有者権限を使わせてもらおう。
俺のせいでダメ人間になったなんて言われてもね。
こうして島のダンジョン探索は休止となったのだが、そうなると日々何をしようか?って事になる。
「って事で、第3628回、何をするか会議~!」
「1回もした事無いと思うけど?」
「ノリだよ、ノリ」
「判らなくも無いけどさぁ、突然は止めて欲しいな」
1回は言ってみたかったんだよ。
「島の探索は一旦中止です。
あまる時間を、何をしたら良いでしょうか?
個人的な話でもパーティーとしての話でもかまわないので、意見をお願いします」
「そうですね……あっ、俺はやってみたい事があります」
「はい、カンダさん。どうぞ」
「あのですね。船の操作を習いたいんです。
折角船を買ったのですから、使いますよね? 操船技術を持った者が居た方がいいでしょう?」
「確かに。じゃあそうしようか?」
「あっ、俺とあと1人で良いと思いますよ?
あの大きさだと、2人居れば大丈夫だそうですので」
「そうなの? じゃあ誰が行く?」
「私が行くっス!」
「えっ? コタニさんが?」
「船の事を詳しく知って、あの船に霊はいない事を証明するっス!
霊なんて見間違いだと、気のせいだと、ありえないと、証明するっス!」
「そ、そうかい。頑張れ」
カンダさんとコタニさんは操船を習いに行く事に決まった。
「じゃあ、残った俺達は何をしようか?」
「何か娯楽は無いのかな?」
「娯楽ねぇ……。ダンジョンも近くに無いようだし。釣りくらいじゃない?」
「じゃあ、釣りをしましょうか」
「船の上でも出来るしね。今の内から練習しようか」
って事で釣りをする事に決定。
と言っても、昼過ぎから夜までだが。
翌日の昼過ぎ、漁業ギルドに行く。
海の事ならここが一番詳しいだろう。
中に入り、船を買った時の受付に行く。あっ、同じ人だ。
「すみません、釣りをしたいんですけど……」
「……どうぞ」
「いえ、勝手にして良いのか?とか聞きたいな、と」
「そういう事ですか。釣りをするのは自由です。進入禁止の場所以外ならどこでも良いですよ。
ただ、出したゴミは持って帰ってくださいね」
「了解です。えっと、竿とかエサとかは何処で売ってますか?」
「ウチでは売ってないですね。ここから3件先の店で売ってますよ」
「ありがとうございます」
言われた店に行き、釣竿セット・エサ・リールを買う。
リールは魔法道具だった。
現代の自動巻きリールみたいな感じ。
糸は前にオークションで買ったのがあるから、それを使う。
売ってたのは蜘蛛の糸みたいなので、透明じゃなかったんだ。
買い物ついでに釣りに向いている場所も聞いてみた。
この町の港付近でも釣れるが、少し南下した方が大物がかかるらしい。
ただ、獣も出るので、冒険者同伴の方が良いと言われたが。
自分達が冒険者なので、危険は回避出来る。
大物が釣れると言うのなら、行くしかないでしょ!
今日は準備に時間を使ったので、明日からは釣りの日々だ!




