ダチョウ
「それで、今から行っても良いのかな?」
「昼の手伝いがあるので、自分は行けませんよ? それでも良ければ」
「う~ん、持ち主が行かないのに私達だけ行ってもな。
いつ行くんだい?」
「昼の手伝いが終わったら行きますよ」
「帰りは?」
「夕方には帰ります。馬車に行かないといけないんですから」
「そうだった……。じゃあ昼過ぎだね」
「はい。島へ行くつもりなら、店で待っていてください」
こうして俺達は赤木亭に戻った。
昼の手伝いも終わり、2階に行くとヨウジさん達が待っていた。
『コネクト』でカジノの町の家に行き、マーカーの前に行く。
「じゃあ、ヨウジさん、開けてみて下さい」
「おう。……所で、私の事を信用してるよな?」
「なんですか? いきなりですね」
「だってさぁ、あれだけ脅されると……」
「脅しましたっけ?」
「君が信用出来ない人間は海の中に飛ばされるって言われたら、脅しにしか聞こえないよ?」
それを聞いた俺の仲間達が、顔を青くしてる。
「ちょっと! 聞いてないんだけど!」
「マジっスか?!」
「「新婚で死にたくないです!」」
「君達、何度も通ってるじゃん! それに話をしてた時に居たよね?!」
「「「「聞いてませんでした」」」」
神って時点で聞くのを放棄してたに違いない。
まぁ、この人達が海に行く確率は0%だから良いんだけどさ。
「大丈夫だから! それにヨウジさん。登録出来てるんですから、大丈夫ですよ!」
「そうかな? その後に不振に思ってない?」
「思ってません! 開けて通れば判りますよ! ほらほら!」
「通ったら海だったじゃシャレにならないよ?!」
「頑張って泳げば水面に出られますよ、多分。さぁ、どうぞ!」
「無理でしょ?! はぁ、判ったよ。行くよ。男は度胸だ!
あっ、もし死んだら霊になって出るからね」
「強気なんだか、弱気なんだか……」
ビクビクしながらヨウジさんは、スロットに手を入れた。
するとガチャという音と共に扉が開く。
「ほら、開いた。後は通るだけですよ」
「それが一番怖いんだけどね……」
「ここは私が先に」
「ライドウさん。先に行っても意味無いらしいですよ?
人ごとに分別されるらしいですから。万が一海でも、同じ場所とは限らないですし。
さ、ヨウジさん。通ってください」
「福田君、楽しそうだね?! 私は何かしたかな?!」
「いえ、押すな、押すな、と言われると押すのが決まりでしょ? ダチョウ的に」
「ダチョウ?」
「まぁ気にしないで。ささ、どうぞ」
ぬるい風呂じゃなくて、生死がかかった扉だけどさ。
大丈夫、ちゃんと島に行けるから。多分。
覚悟を決めたのか、ヨウジさんは扉に進んで入っていった。
慌ててライドウさんが後に続く。
俺達はその後に通った。
やはり予想通り、2人とも島に来ていた。
そして見える景観にアングリと口を開けて驚いている。
「いらっしゃいませ。ようこそ俺の島へ。
あっ、これ案内図です。俺達はダンジョンに行きますんで。
夕方になったらココに集合しましょう」
そう言ってパンフレットを渡そうとしたが、いまだに呆然としてるのでポケットに入れておいた。
さっ、ダンジョン攻略だ。
夕方になりダンジョンから戻ったが、東屋に2人の姿が無い。
どこに居るのだろうか?
行きそうな場所を探そうとパンフレットを出すと、港の横の方に緑の点が付いていた。
俺のタブレットに入っているマップみたい。便利だ。
そうなると、この緑の点が2人なんだろう。
2人が居た場所。そこは海水浴場だった。綺麗な砂浜だ。
そこで2人は何をしてるのかというと、ビーチパラソルの下にデッキチェアを置いて水着で寝転んでた……。
どこから出した?!
聞けばパラソルやチェアは元からあったらしい。
水着は近くにあった『海の家』の中にあり、欲しい水着の上に書いてある金額を置くと買えたそうだ。
水着の自動販売機まであるのかよ……。
俺よりも先に島を満喫してるんじゃねぇ!!




