近況報告
その日から1週間、俺達はダンジョン攻略に力を注いでいた。
朝はヨウジさんと共に馬車へ行き顔を出す。
昼前から赤木亭で手伝い。
それから夕方までダンジョン攻略。
夕方にはまた馬車へ行き顔を出す。
こんな忙しい1週間。
ヨウジさん達はすっかり仕事に慣れてしまい、毎日が楽しいそうだ。
朝と夕が面倒と言い出すくらいに。
俺も面倒だけど、王族なんだからそこは諦めてもらいたい。
赤木亭は食券制度が根付いた。
食券販売係とウェイトレスが一人づつ雇われた。
聞けば冒険者だという。
ランクが低く、なかなか稼げないので助かると言っていた。
似合ってるので、このまま就職するんじゃないだろうか?
ダンジョンはやっと4階をクリアした。
このダンジョンには、恐ろしい罠があったのだ……。
それは、モンスター相手に俺の運が通用しない事!
ダンジョンのパンフレットに『福田君、頑張ってね♪』と書いてあった意味が理解出来たよ。
運無しで実力で進めという事だ。
これが神の力か! 恐ろしい!!
そして、このダンジョンに出てくるモンスターはどれもが喋る。
これがまた鬱陶しい。
4階に出てきたモンスターはベニスライムと言う名のスライム。
ただ単に色が違うだけだろとレイピアを刺そうとしたら、俊敏に避けやがった。
「ふふふ、スライムと思って侮っただろう?
スライムとは違うのだよ、スライムとは!」
よく見れば、赤い体に小さいツノが生えている。
3倍か?! 3倍なのか?!
だが、あっけなくカンダさんに切り捨てられた。
「認めたく……ないものだな。自分自身の……若さゆえの過ちというものを……」
これが消える前に言った言葉。
ウザい。誰が教えたのだろうか?
一瞬ナグラさんかと思ったが、やっぱりルシファーさんだろう。
あの人、アニメ好きなのか?
確信に変わったのはゴブリンが出た時だ。
剣で2回切ったら、叫びやがったのだ。
「二度もぶったね! 親父にもぶたれた事ないのに!」
問答無用で退治してやった。
ルシファーさん、絶対アニメ好きだね!
だってさ、5階に進む階段を降りた先に居たオーガ。
柱の影に隠れてたんだけどさ、何かブツブツ言ってたんだよ。
よく聞くとさぁ、
「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ……」
これだよ?
無視してエレベーターに乗って帰ったわ。
次は5階から始められるようになったけど、気が滅入る……。
ちなみに、セキハイムを目指してるニーベル国一行は、やっとノートルダムに入った。
ここの王都でノートルダムの一行と合流して、一緒にセキハイムに向かうらしい。
バラバラで行くよりも安全だからね。
王都に着いたら、ホウズキさんの所に寄っていこうと思っている。
問題は謁見がある事だ。
あの王様に見つからないようにしなとなぁ。
見つかったら100%捕まるだろう。
上級魔法を覚えても良いんだけど、今はダンジョンの方が忙しいんだよ。
攻略には便利かもしれないけど、時間がなぁ……。




