知識チート?
「おう、兄ちゃん。何をやってんだ?」
「いらっしゃいませ。これは食券を売ってるんですよ」
「食券?」
「ええ。ここで食べる物を選んで頂き、お金と引き換えに食券をお渡しします。
それを持って中で座って頂ければ、注文した物が出てくる仕組みです」
俺は訪れる客一人一人に説明していく。
「追加注文したい時はどうすんだ?」
「ここで食券を買って頂いてもよろしいですが、従業員にお金を渡せば食券を買ってきますよ」
「なるほどな。じゃあ今日のオススメをもらおうか」
「ありがとうございます。600円になります」
1000円を受け取り、400円のお釣りと共にオススメと書いた紙を渡す。
お金は俺の横に置いた箱に入れている。
フードからチョロが見張っているので、盗難は無理だ。
食券制度は思いの他好評で、特に問題もなく昼の営業は終わった。
「兄ちゃん達、ご苦労さん。どうだった?」
「ちょっと待って下さい。今集計してますから」
「集計?」
「ええ。今終わりましたよ。これが今日の売り上げです」
「ん? マジか! すげぇ多いじゃねぇか!」
「同じだけ客が入ってたとすれば、計算ミスや食い逃げが多かったって事だと思いますね」
「ふ~ん。便利だな、これ」
理解してもらえて何よりだ。
って言うか、どれだけ計算ミスしてるんだろうか?
まぁ中には食い逃げも居ただろうけどさ。
「利点は他にもありますよ」
「他に何があるんだ?」
「何が売れてるかすぐに判ります。
今日はそうですね……オススメが一番多いですね」
「それが判ってどうするんだ?」
「メニューの増減が出来ますよ?」
「どういう事だ?」
「もっと集計が必要ですけど、今日を例えにするとですね。
オススメが多く売れているので、オススメに使う食材は多めに仕入れる必要があるでしょう。
逆に一度も出なかったメニューは、止める事で仕入れの無駄が無くなります」
「確かに、仕入れたけど使わなくて従業員で食べる食材もあるなぁ」
「無駄を減らす事で儲けが増えますよ」
「良し! 採用だ! 明日からもこれで行こう!
兄ちゃん、賢いな! 天才か?!」
止めて欲しい。
これくらいで知識チートと思われるのは恥ずかしい。
悪いけど、この店が大雑把なだけで他の店では似たような事してると思う。
この世界で俺が行った店で一番多かったのは、商品と交換でお金を払うシステムだったな。
あれって従業員がお釣りを持ってないとダメなので、面倒だなと思っただけなんだよ。
それにナグラさんとコタニさんは今日からアルバイトしてる。
全メニューの金額なんて覚えられないだろうから、上記の方法じゃ無理なんだよ。
「採用するのは良いですけど、食券売り場の人は雇ってくださいね?」
「おう、判ってるぜ。兄ちゃん達がいつまでも居る訳じゃねぇからな!」
「それもありますが、食券を注文されてから作るのは大変だったので……」
「そうか。じゃあ今から雇ってくるわ! 今日はもう上がって良いぜ!」
そう言って店長は出て行った……。
どこで雇ってくるんだろうか?
バトラーギルドがあればそこに行くんだろうけど、ここには無いらしいし。
冒険者ギルドにでも行くのかな?
上がって良いって事なので、2階に行き皆の話を聞く事に。
カンダさん達は、やはり城へ行けと言われたそうだ。
城の事は俺から話した。警察に追われた事は黙ってたけど。
ナグラさん達も同じ様に城へ行けと言われたそうだが、面白い話を聞いてきてた。
「船を買わないかってさ」
「船?」
「船を買って、港の使用料を払えば、そこに住んでも良いみたいだよ?
そういう人が結構居るみたいなんだ」
なるほど! 地球でもそういう国があったね!
それなら船に従魔を付ければ良いか。危険があれば海に逃げてもらえば良いし。
貰った島に船で行くって方法もある!
釣りに出るってのも楽しそうだ。
興味が出てきたぞ! その話、乗った!




