アイランド
ここから俺の物語は始まる。
俺は開拓者として呼ばれたのだ。
これから島に人を呼び、発展させていかなければならない。
その為には法律を作り、外敵から守る為に軍隊を作り、インフラ整備を進めなければ。
やる事は山積みだ……。
な~んて事は、一つも無い。
いやぁ、島を貰うとかってある意味定番でしょ?
ならば定番な事を考えてみたんだが。
本当はもっと考えたかったんだが、目の前の島を見ると無理でした。
まず、到着したのはちょっとした東屋。ここにドアが1枚だけ立っている。
この周囲には見た感じで4件くらい家が建っている。
地面は石畳と芝生。
家々の向こうには海が見える。石畳も海まで繋がってるのだろう。
後ろには山。登ろうと思えば登れる高さだ。噴煙は上がっていない。
そう、はっきり言って日本の別荘地。
開拓の余地無し。
のんびりと余暇を過ごす場所だよ。
「どう? 頑張ったでしょ? あの一回り大きい家が福田君の家だからね」
「頑張りすぎですよ……。色々とどうなってるんですか?!」
「君の元居た世界を参考にしたんだよ!
下水処理なんかも完璧さ! 環境保護もバッチリ! あっ、港と船もあるからね~!」
「意味が判りません……」
「そうそう、山に向かって石畳を歩いて行くと、ダンジョンがあるから。食料とかはそこで集めてね!」
「はい……。もういいです。判りました」
俺は諦めた。
もう作られてるし、今更オーバーテクノロジーだと言っても無駄。
俺が許可しなきゃ誰も来れないなら封印してしまえば問題無いはずだ。
「ふーん。なんかテンション低いね?
まぁいいや。そこに詳しい説明を書いた物があるから読んでくれたらいいよ。
じゃあ帰るから!」
「ちょっと待って! あの上にある太陽は?!」
「結界があるから光は外に漏れてないよ。それに、後1時間くらいで消えるから大丈夫!」
「そうですか」
「うん。じゃあまたね!!」
あっけなくルシファーさんは帰っていった。
忙しいのだろう。
忙しいなら俺の事は後回しで良かったのに……。
ふとドアの横を見ると小さいテーブルがあり、その上には文鎮が。
その下には折りたたまれた紙束がある。風で飛ばないように文鎮が置いてあるのだろう。
その紙を1枚取ってみた。
『アイランドの施設紹介!』
……こんな文字がデカデカと書いてある。
パンフレットかよっ!!
開いてみると、中にはこの島のマップが書いてある。
そして各場所の説明が丁寧に記されている。
……本当にパンフレットだわ、これ。
見て回るなんて事はせずに、パンフレットだけ持って家に帰る事に。
大体、明るいけど今は夜中だぞ? 帰って寝るわ!
ドアはスロットに手を差し込むと自動で開く。
通り抜けると、自動で閉じる。そりゃドアノブも要らないよね。
ちゃんと家に帰れたようだ。良かった。
よくよく考えたら、明日はまたこの部屋からセキハイムに行く訳で。
そうするとあのドアは皆の目に入る事に……。
説明する事を思ったら、頭が痛くなってきた……。寝よう。
翌日、当たり前だが皆から質問攻めにあった。
そりゃそうだ、昨日までは無かったんだから。
俺は黙って、持って帰ったパンフレットを手渡した。




