神の結界
「そう。主人の登録。これをしないとドアが役に立たないんだ」
「はあ。で、どうやるんです?」
「まずは私が初期設定をする。
これはマスターキーみたいなモノだと思ってくれたら良いよ」
「はぁ……」
「えっとー、判ってないみたいだね。
つまりだねぇ、マスターキーが無いと主人の登録が出来ないんだよ」
って事は、誰かが無理矢理変更しようとしても無理って事か。
登録や変更をするなら、ルシファーさんが必要って事ね。
じゃあ、完璧なセキュリティじゃないか!
納得している内に、ルシファーさんはドアの隙間に手を差し込んでた。
するとその隙間が光りだす。
「はい、これでOK。さ、次は福田君がスロットに手を入れて」
「は、はい」
スロットって言うのか。
そこに恐る恐る手を差し込む。
電気が流れる訳でもなく、数秒で光が収まった。こんな簡単で良いの?
「これで主人の登録は終わ~り~」
「主人を決める意味は何ですか?」
「よくぞ聞いてくれました! 実はセキュリティの為なのです!」
「はぁ」
「実はこのドアは現在、福田君の魂と連動しています!」
「魂?!」
「そうでーす。それによって、福田君が好意的に思ってる人は登録する事が出来まーす。
逆に、そうでない人は、何をしても登録をする事が出来ませーん!」
「例えば、俺が脅されててもですか?」
「ここが凄い所なんですよ!
例えばABCの3人が福田君を脅したとしましょう。
そうですね、人質を取った事にしましょうか。
で、登録をしてドアを開けて、A・B・人質・C、の順で島に行こうとした。
するとですね、なんと! 人質は島に行けますが、ABCは海の中に転移しまーす!」
「ドアが自動で選別するんですか?!」
「ピンポーン! 正解!
しかも、登録した時は好意的に思っていた相手が、しばらく立ってから思えなくなった。
こんな事ってありますよね?
そういう場合は、ドアが開かなくなりまーす。
他の人が開けたドアに付いて入ろうとしても、元の場所に戻されまーす」
何それ。俺の心の中を利用した鍵って事?
しぶしぶ許可しても、心の中で嫌だなって思ってたら通れないのか!
無理矢理な場合はドアを通った時点で死亡確定……。
待てよ? 『コネクト』はどうなんだ?
「魔法の『コネクト』を使えば意味無いんじゃないですか?」
「あぁ、島に行った時に『門のシール』を設置するって事?
無理無理。島の周辺には結界があるから」
「結界?」
「そう。このドアと連動してるから、許可無いと通過不可能な結界。
物理攻撃も魔法も通用しない結界だからね。
当然『コネクト』も弾かれるよ。島の中を移動する分には問題無いけどさ」
「台風や津波など、自然なモノはどうです?」
「小規模のモノなら通過するよ。そうしないと、魚も空気も入れないからね。
ただ、人的被害が出る規模のモノなら弾かれるだろうね。
まぁ、そこら辺も福田君の気持ち次第さ。危ないなと思えば通過しないだろうね」
それは完全結界と言われるモノじゃないでしょうか?
しかも神様が作った物でしょ?
この世界に居る人が突破出来る訳無いじゃん。
「名付けて『結界ドア』! 一家に一台どうぞ!」
「どうぞって言われても……」
「今ならもう一台付けます!」
「いや、テレビの通販じゃないんですから……」
「じゃあもう一台付けちゃおう!」
「ですからね……」
「まぁ、冗談はさておき、後2台は渡すから。好きな所に設置してね」
「えっ、あっ、はい」
「ここしかないんじゃ不便でしょ?」
「あ、ありがとうございます……」
まぁ確かにカジノの町の家にしか無いのは不便だけど。
出来れば王都の家にも設置したい。
いや、そんなに島に行く事があるのか?
まずそこからだよね。
「さっ、ドアも付けたし、早速島に行こうか!」
「夜中ですけど?」
「えっ? 問題有る?」
「ありますよ! 暗いでしょ?!」
「あぁ、そんな事か。結界内に一時的に太陽でも出すから気にしないで」
やはりこちらの常識は通用しないようだ。
一時的に太陽を出すとか、さすが神様だ(褒めてはいない)。




