ルーシー
どうやら隣の部屋に居たようで、ルシファー様はすぐにやってきた。
「どうも、創造神をしているルシファーです」
「よ、よろしくお願いします、ルシファー様。福田と申します」
「あぁ、硬い、硬いな。ルシちゃんと呼んでも良いんだよ? そこのイイクラ君と同期なんだから」
「で、では、ルシファーさんで」
「え~、ルシちゃんとか良くない? じゃあ、あだ名っぽく、ルーシーで!」
「おい! お前の世界の住人も見てるんだぞ! ちゃんとしろ!」
「ブーブー! 良いじゃないか。住人に愛される神を目指してんの!」
「そんなんで愛されるか!」
「えー? 良くない? ルーシーって。親しみやすいでしょ?」
「すみません、福田さん。こんなヤツなんです……」
軽い! 軽いぞ、創造神!
まぁ、それを言ったら閻魔様もそうだけど。
ルシファーさんは、中性っぽい外見の人だ。人か?
金髪で長髪。男装の麗人みたい。 声は男なんだけど。
「もっと神っぽい威厳を見せろって言ってるんだ」
「神っぽい威厳ってなんなのさ。バカ達みたいに偉そうにすれば良いの? ヤダよ」
「そこまでは言ってない」
「出来ないヤツほど、偉そうにするの。そうしないとメッキが剥げちゃうからね。
だから私はフレンドリーで良いのさ! 出来る神だからね!」
言ってる事には納得出来るけど、フレンドリーな神様ってのはどうかと思う。
ラノベじゃあ主人公とフレンドリーな神様って沢山居るけどね。
「さぁ! 福田君とその仲間達よ!
私と仲良くしようじゃないか! 何か質問でもあれば受け付けるよ?」
「い、いえ、そう言われても……」
「じゃあ、私が質問させてもらっても良いですか?」
「はい、何でしょう? 君は確かナグラさんだったね? どうぞ」
「神様が失敗して、住人が死んでしまい、可哀想だから転生、なんて事はあるんですか?」
おい! そのまんまラノベじゃないか!
何を本当の神様に聞いてるんだよ! 確かに俺も思ったけどさ。
そこはファンタジーで良いじゃないの?!
「あ~、知ってる知ってる。残念ながらね、そういうのは無いよ」
「そうなんですか?」
「私をルーシーと呼んでくれたら教えてあげよう」
「ルーシーさん、教えてください」
「いいねぇ! 君! 素質あるよ! 教えてあげよう!」
やっぱり軽いな!
そしてナグラさん、お前も乗るな!
周りを見ろよ。閻魔様とイイクラさんが頭が痛そうにしてるぞ?
まぁ、聞きたいから良かったけどさ。
「まず、基本的に神は失敗しない。仕事だからね」
「基本的に、って事はあるって事ですよね?」
「そうだね。他のアホ達はよく失敗してるみたいだしね」
「その場合はどうするんですか?」
「ん~、別にどうもしないかな。ここからは気分が悪くなるような話だけど良いかい?」
「はい」
「では話そうか。
皆に判るように言うなら、蟻をガラスのケースに入れて飼っているような感じかな?
その中では1万匹の蟻が生活してると考えて。
そこにエサをやり忘れたとしよう。それで1匹の蟻が死んだ。
その蟻を生き返らせる力を持っていたとして、生き返らせるかい?
しかもそのケースだけを見ている訳では無いんだよ。同じようなケースが10個あったら?
生き返らせるのに1日の業務が滞るとしたら?
そこまでしてやる必要が無いんだよ。ミスで死ぬのも自然の一部だよ」
「ケースから違うケースに移すのはどうですか?」
「それは簡単だね。でもね、ケースにはさまざまな情報が書かれている。
そしてその情報は全て集められて管理されている。
すぐにバレてしまうよ。当然、許されてないしね」
「でもやろうと思えば出来るんですね?」
「出来るよ。すぐにバレると思うけど。
でもそれは犯罪扱い。下手すれば死刑になるよ。
それが判ってるのに、1匹の蟻を助ける?」
「そうですか。判りました」
「うんうん、賢い子は好きだよ。まぁ、そんな感じなんだ。
意外に大変なんだよ、神ってのもさ。
ちなみに創造神ってのは、そのケースの中を改造するのが仕事さ」
神様も大変なんだなぁ。




