位の話
翌日。
馬車に戻った俺達は南に向けて進んでたのだが、馬車ごと攫われた。
盗賊が出たとか王族が来たとか、そんな話ではない。
物理的(魔法的?)に攫われたのだ。
犯人は閻魔様。
いくら偉い人でも誘拐ですよ?
「いやぁ、福田君! よくやってくれた!
ミズウミは完全に真人間に戻ったようだ。ありがたい!」
「はぁ。それは良いんですけど、急すぎませんか?」
「ん? 何が?」
「馬車ごとの転移ですよ!」
「ああ、気にするな」
一言で終わりですか……。
「それにですね、俺はともかく、この世界の人間の前に出て良いんですか?」
「問題無い」
「……そうですか」
軽いなぁ。
いや、軽いんじゃない。俺達では何も出来ないんだろう。
身の危険なんか感じてないんだと思う。
俺も運が通用しないなら無理だし。
「あああああ、あの、福田さん。ここここここ、こちらの方は?」
「え~、そうそう。ICPOのトップの人?」
「そそそそ、そうなのですか?」
「うん。ほら『技術』を貰ったでしょ? あんなのが簡単に出来る人だよ。
今回はその技術の底上げしてくれるらしいよ」
「後、上昇率の増加もだぞ、福田君よ」
「そうでしたね」
「そそそそそそそ、それは、かかかか神と、言うのでは、ななななないでしょうか?」
カンキジコンビが揃ってカミカミだ。神を前にしてるだけにってか?
つまらんな! 自分にツッコミかよ!
あぁ、俺も混乱してるな。
「まぁ、そういう事になるかな?」
「マママママママ、マジですか……」
「いやいや、違うぞ、福田君よ」
「えっ? 違うんですか?」
あれっ?
確か閻魔って神様だったような? 仏様?
地蔵菩薩だったっけ?
「あんなのと一緒にしないでくれ。ほら、何て言われてるか知ってるだろ?」
「え~と、閻魔大王ですか?」
「そう、大王なのだよ」
「すみません。位を知らないので、何とも言えません」
「そうなのか? じゃあしょうがないな。イイクラ、説明してあげなさい」
「判りました」
日本人で詳しい人って少ないんじゃないかな?
それに詳しいとしても、人間が作ったシステムだろうしなぁ。
「では説明します。
まず、一般人が居てですね……」
「ちょっと待って下さい! 一般人って何ですか?!」
「えっ? 地上業務に就いてない人達の事ですが?」
こらこら、そっちの領域での話をされても意味が判らないよ?
もうちょっとさ、何て言うの? 信仰的な方向でお願いしたい。
「地上から見た感じでお願いしますよ」
「えっ? あぁ、そういう事ですか。
では。まず天使ですね。これが先ほど言った一般人になります」
えっ? そんなに天使って位が低いの?
「次に地上業務に就いている者。これは大天使です」
「じゃあイイクラさんも?」
「はい。大天使で良いと思います」
なんだと……?
って事は、アサイさんも大天使……。
ないわー。
「次に管理職。課長とか部長とか。この辺りが神とか仏ですね」
「神課長に仏部長……」
話についていけなくなってきた。
あれ? そうなるとイイクラさんは?
「イイクラさんは、じゃあ神じゃないんですか?」
「そこまでまだ昇進してませんので」
「いや、お前は拒んでるだろ?」
「アレと一緒にはなりたくないので……」
イイクラさんが拒むくらいなんだ。
何をしてるんだろう? 聞くのが怖いな。
「ゴホン。その上の常務とか専務とかが王や創造神ですね」
「って事は……」
「そうです。CEOが大王です」
「トップじゃないですか!」
何気に神界のトップクラスと交渉してたようだ……。
シャレにならん。
って、その息子がミズウミかよ?! 良かった、矯正しておいて。




