王様との密約
あの後タルーンさんは目覚めなかった。
いや、死んだんじゃないよ?
どうもあちこちに仕事で行ってて疲れてたみたい。
護衛の人に「明日の夜にまた来ます」と伝えてくれとお願いしておいた。
次は城だな。
いつもの通り『これから行きま~す』とメールをしておいて、タルーンさん家の物置から城へ行く。
送ってから気づいたのだが、メールで内容を聞けば良かったんじゃね?
もう遅いけど。
今回メールした相手は王様本人だ。
ネモト卿はもう帰ったんじゃないかなと思ってさ。
部屋に着いて10分ほどで王様が現れた。
政務も終わったからかラフな格好だ。
「福田君はいつも急に来るなぁ」
「いやぁ、そんなに褒めなくても」
「褒めてないぞ? で、何の用だ?」
「コルラド国での用事は終わったので、寄り道しながら帰ろうかな~と。
で、大会について聞こうと思いましてね」
「まっすぐ帰ってくれば良いではないか?」
「……行きの道中でね、大量の変態に会ったんだよ? 同じ道で帰れと? まだ居るかもしれないのに?」
「……そ、そうか。ではどのようなルートで帰るのだ?」
「海沿い」
「遠回りではないか! 間に合わないぞ?!」
「だからそれを聞きに来たんだよ。開催国に直に行っても良い?」
「あぁ。そういう事か。開催国はセキハイムだ。通り道だな。
だが、直接行く事はダメだな」
「何で?」
「参加するのが君だけではないからだ。他の参加者も居るし、王族も参加する。
その中で一人だけ別行動はさすがに許されないだろう」
そりゃそうか。
王族まで一緒に行くのに、一般人が何を悠々と別行動してんだって話だ。
「じゃあ『コネクト』で参加するわ」
「それしか無いだろうな。後はいつでも連絡が取れるようにネモト卿を行かせよう」
「じゃあ、『門のシール』を新たに頂戴ね?」
「はぁ?! 何でそうなるのだ?!」
「いやいや、王様が参加しろって言ってるんだよ? それくらい用意してよ」
「自前のがあるだろ?」
「くれないのか~。じゃあしょうがないなぁ~。旅先から戻るのは何時になるかな~」
「ぐっ……。汚いぞ!」
「俺が大会に参加しなくても勝てるのかな~」
「ムムム……」
「あっ、そうだ! ノートルダムの王様にこの話するかな~。
あっちの国の代表で参加しても良いかな~」
「待て! それは待て! 判った。用意しよう。1枚で良いな?」
「おいおい、移動先が1箇所じゃヤバいだろ? 10枚」
「10枚は多い! 2枚」
「いざという時に避難も出来るんだぞ? 8枚」
「護衛が付いているよ。 3枚」
「ハズキ君が……。 5枚」
「ハズキがどうした! 5枚で良い! さぁ、話せ!」
チョロいな。
孫を出せばすぐ陥落するぞ。
「ハズキ君が、学校は楽しいって言ってた。それだけ」
「くっ! 汚い! 本当に汚い! もう一度言おう、汚い!!」
「何度言っても良いけど、5枚で決定だからね?」
「ズルい! 汚い! 卑怯! 悪党! 外道!」
「……15枚にしようか?」
「いや、5枚で。明日にでも渡そう。
大会の詳しい内容は、その時に話そう」
「じゃあそれで」
話は終わったのでそのまま帰宅した。
これで変態ルートは回避出来たぞ!
海沿いのルートに変態が居ませんように……。




