変態お断り
現在15時くらいなんだが、もうこの国には用事が無い。
あっ、1つだけあったわ。サキへの復讐だ。
だが、あの道は通りたくない。
帰りの道中に変態達が居るんだぞ!
という事で、違うルートで帰る事にした。
サキへは個人的に後日嫌がらせをしよう。
行きで通った道が一番早いルートだが、違うルートが無い訳ではない。
こちらのルートは王都からミノタウロスのダンジョンの方に進む。
つまりウエダさんの居るオオキの村を通る道だ。
時間に制限があるので、こちらのルートにしたんだが……。
宿屋の主人に話を聞くと、海沿いのルートがあるらしい。
ここからさらに3日間南下すると海に出る。
そこから海岸線を進むと、大森林を迂回して、漁業と鉱業の国『セキハイム』に着く。
セキハイムの隣はノートルダムで、通過しニーベル国へ。
観光したいってのが当初からの目標だったので、色々な国に行けるのは魅力的だ。
でも時間がな~。
って考えてたら「用のある時は『コネクト』で帰れるのでは?」とキジマさんからの提案。
それだね! 別に大会があるかといって、王都に居なければならない訳じゃないし。
それに今思ったのだが、どの国で開催するのだろうか?
国によっては直接行けば良いんじゃね?
後で聞きに行こう。
という事で、南下するルートに決定!
早速出発する事に。
何で15時に出発するのかって?
やっぱり実力主義の国だけあってさ、試練のダンジョンをクリアしてメダルを持ってると人が集まってくるんだ。
これが非常に鬱陶しい!
中には女性陣に「結婚してください!」とか言ってくるヤツも居た。
あぁ、カンダさんにも「結婚して!」って言ってる女性が居たなぁ。
カンダさんがキジマさんに殴られてたけど……。
皆が鬱陶しそうにしてるので、さっさと退散ですよ。
俺? 誰も来ないよ? 何か?
べ、別に悔しくなんか無いんだからねっ!
2時間も進めば、町の喧騒も無くなる。
特にこの時間は、暗くなる前に町に入ろうとする馬車とすれ違うだけだ。
完全に暗くなる前に、適当な場所に馬車を止めて家に帰った。
大会の事を聞く為に、今日は王都の家だ。
帰るとヒタキさんが手紙を俺に渡してきた。
相手はタルーンさんだ。
そうそう、タルーンさんだけど。
最初の3日間は王都に帰ってたけど、一度も帰宅の連絡が無かった。
いつになるんだろうとメールを送っておいたんだけど。
手紙には「2日後には王都に到着予定です」とあった。
手紙を貰ったのが4日目だったらしいので、既に帰宅してるだろう。
城に行く前に、タルーンさんの所だな。
タルーンさんの所に行くと告げると、カンダさんだけ護衛で付いてくる事になった。
どうもまだキジマさんの機嫌が悪いらしい。
逃げてきたか……。
「おぉ! 福田様! お久しぶりです!」
「タルーンさん。顔を出さずにすみませんね」
「いえいえ。
そうです! 頼まれていた防具ですが、完成しましたよ!」
「あ~そうですか……」
「おや? ドラゴンの鱗を削って出た粉を使った防具ですよ?
どうされました? テンションが低いようですが?」
「あの~……すみません!」
「えぇっ?! どうされたのですか?!」
「実はですね……新たな物が手に入りまして……それも追加してもらいたいな~なんて」
「新たな物ですか? ドラゴンの鱗以上の物なんか早々手に入りませんよ?
それこそミノタウロスの角とかなら別ですが」
「それです」
「どれです?」
「ミノタウロスの角です……」
「はぁ?」
「いやぁ~貰っちゃった! テヘペロ!」
人が折角可愛らしく自分の頭をコツンと叩きながらテヘペロしたのに、タルーンさんは見てない。
何故なら膝から崩れ落ちたからだ。
見てくれないと恥ずかしいだろ!
そんな事考えてると、タルーンさんに肩を捕まれガクガクと揺すられた。
「ま、まさか、本当にですか?! もしや人数分あるとか言いませんよね!!」
「わわわ、ちょっと落ち着いて! ちゃんと人数分有りますから!」
「ひあーっ!!」
奇声を上げて、タルーンさんが倒れてしまった……。
それほどの物なのか……。
う~ん、角をどうやって防具にするのか聞きたかったんだが無理だな。
俺はカンダさんと一緒にタルーンさんを運んだ。
そっと枕元に置いて帰ったら、また卒倒するかな?




