クリア後
俺はそのまま最初の小部屋に移動させられた。
服はちゃんと洗濯して折りたたんで置いてある。
マスクもちゃんと外れたので助かった。
着替えてエレベーターに乗り1階へ向かう。
扉が開くと変態さんが出迎えてくれた。
「今お仲間達は、武具を返してもらったりメダルを貰ったりしています。
入った扉から出てこられるので、そちらにお回りください。
はっ! じゃあ今なら誰もここには居ないって気づきましたね!
今の内に私を手篭めにしようと……」
「はい、じゃあ表に回りまーす」
変態は放置だ。
関わると危険だよ。
前に回ってミーちゃんと待っていると、扉が開いて皆が出てきた。
皆はクリアして楽しそうに話してる。
特にモリタ君は武具を取り戻した事が嬉しいのか泣いている。
良いなぁ、楽しそうで……。
「あっ、福田さん! ちょっと聞いてくださいよ!」
「そうっス! 聞いてほしいっス!」
「えっ、何?」
「ラスボスがね、福田さんを騙ってたのよ。ムカツクわ~!」
「そうっス! 福田さんはあんなにバカな事しないっス!」
「腹が立ったからね。ボコボコにしてやったわ」
「そ、そうかい……」
気づかれてないようだ。
俺を騙ったからあんなに執拗に攻撃してきたのか。
まぁ、嬉しいような恥ずかしいような感じだ。
騙ったと言われても、俺なんだけどね。
うん、この事は黙っておこう。
「で、モリタ君は、無事に取り戻せたのかい?」
「えぇ! 本当にありがとうございました!」
「まぁ、俺は何もしてないけどね……」
「いえ! 福田さんのお陰です! このお礼は必ずするので!」
「いや、お礼は別に良いよ。それよりもなくさない内に早く持って帰った方が良いんじゃない?」
「あっ、そうですね……。ではお礼は後日! 失礼します!」
なんにしても良かった。
これでモリタ君ともお別れか。
ご苦労様でした。
お礼は後日って言ってるけど、ミーちゃんの件が終われば帰るんだけどね。
「さて、次はミーちゃんだね」
「はい?」
「一人でクリアするようにとのお達しだよ。頑張れ」
「聞いてないけど?」
「言ってないからね。って言うか、さっき聞いたんで」
「ではミズウミ様。こちらへどうぞ」
いつの間にか変態さんが来ていて、ミーちゃんを連れて行った。
皆に攻略方法とか聞く間も無かったね。
こちらも頑張れ。
ミーちゃんには運が効かないから、助けようが無いんだよ。
まてよ? 敵には効くのか?
一応願っておこう。
『この試練のダンジョンのボス達が弱体化しますように』
これで後は待つだけだ。
そう言えば、運を使うなと言われたような気がする……。
でもなぁ、仲間の戦いを見てて、1人でクリアは不可能だと思うんだよ。
ついでに、クリア出来なければ、出来るまでここに留まる事になるだろ?
いいや、バレたらその時はその時だ!
2時間でミーちゃんは出てきた。
ボロボロになってるが、クリアした。
「……君達、優雅だね」
「うん、まあヒマだったからね」
俺達は最初に来た時のカフェ?でくつろいでいた。
昼飯も食べて、食後のお茶をしてたのだ。
「……少しはさぁ、心配するとか無かったかな?」
「心配はしてたよ? 心配するのとお茶してるのは別でしょ?」
「……そうだけど。心配しているようには見えないんだよね」
「じゃあ扉の前で祈ってろと?」
「そういう訳じゃないけど……釈然としない」
「気にしない気にしない」
クリアしたんだから良いじゃないか。
俺なんか入れてもらえないんだぞ?
「じゃあ帰ろうか」
支払いをして宿に戻る。
するとミーちゃんの足元に魔方陣のようなのが出た。
もう連れて帰られるのか。気が早いなぁ。
運を使ったのがバレてないようだし、良いか。




