ジェットコースターに一人
俺達2人は受付の横で座ってダンジョンを眺めている。
今は1階部分が黒くなってるので、2階を攻略中のはずだ。
頑張れよ~。負けるなよ~。
さて、心配なのは当然なのだが、懸念が一つある。
それはこの疎外感だ!
だってさぁ~、皆で同じアトラクションを楽しんでるんだろ~?!
帰ってきたらさぁ、「あいつは硬かったよね~」とか「あの時はダメかと思いました~」とか語るんだろ?
その輪に入れない悲しさよ!
例えるなら、仲の良い有人達と遊園地に行ったのに、人数制限で俺だけ乗り物は別みたいな?!
同じ物を体験してるのに話が合わないみたいな?!
これは辛い。非常に辛い。
いや、心配はしてるよ? 本当本当。
……参加したかった!!!
どうしても諦められない。
よし、もう一度交渉しよう。
「すみません。やっぱり俺もやりたいんですけど~」
「はっ! やりたい……なんて! 先ほどからチラチラと見てたのは知ってるんですよ?!
きっとここで断っても、帰りに暗がりから現れて、そのまま拉致され路上で……くぅ!」
「ダンジョンに! 挑戦したい! って事です!!」
「あっ、無理です」
妄想で暴走したくせに、一言で返すなよ!
イジメか?! 泣くぞ!
くそ~。どうにかならないものか。
ちょっと待てよ? 関係者だからNGって事は、ここはあそこの管轄か?
問い合わせてみるか?
俺はタブレットを取り出し、Tのアイコンを押す。
少しの読み込み時間の後、イイクラさんと繋がった。
「すみません。ちょっと良いでしょうか?」
「お久しぶりですね。何でしょうか?」
「今『試練のダンジョン』と言われる所に来ているんですけど、挑戦出来ないって言われたんですよ。
そうにかなりませんかね?」
「あぁ、アレですか。アレはサキが趣味で作った物なんでして」
「サキ? どなたです?」
「南のダンジョンをしているユニコーンですよ」
あぁ、そういえばそんな名前だったような。
趣味で作ったって事は、関わりが無いって事?
「じゃあ挑戦出来ないですかね……?」
「う~ん。あっ! そうだ! ちょ・ちょっと待っててくださいよ!」
「えっ? あっ、はい」
そう言って画面からイイクラさんが消えた。
そして、持ったまま移動してるのか、画面が揺れてる。
うん、見てると気持ち悪くなってくる……。映像OFFにした。
少ししたらイイクラさんから呼ぶ声がしたので、映像をONにする。
すると画面には閻魔様が!
「久しぶりだな、福田君よ」
「おおおお久しぶりです」
「今『試練のダンジョン』に居るという事だが、合ってるかね?」
「はい。前に居ます。仲間が挑戦中です」
「ふむふむ。私から提案があるのだが、聞いて貰っても良いかね?」
「はい。どうぞ」
「ふむ。ではその前に、一つ聞いておこう。ミズウミはマシになったかね?」
ミズウミ?
湖の水が綺麗になったとかそういう話?
あっ! 違うわ! ミーちゃんの名前だった!
「はい。うちにいるスーパー執事の教育と、ガチムチ筋肉団長の教育で生まれ変わったようになりました」
「よしよし。ならば良いだろう。では提案だ。
ミズウミを一人でそのダンジョンに挑戦させてくれ。
クリアするなら、ミズウミを許そうと思う。クリアと同時に福田君の任務も完了だ。
了解してくれるなら、サキには私から話をしよう。どうかね?」
「これを使って最終テストをするんですね?」
「そういう事だ。福田君は手を貸してはいけないよ? 意味は判るね?」
「はい。運を使うなって事ですよね?」
「あぁ。ミズウミには効かないが、対戦相手には効くだろうからね」
「武具を貸すのはどうですか?」
「ふむ。それくらいはOKとしよう」
「判りました。ではそうしましょう。お願いします」
「判った。ではサキに連絡する。そこで待っていれば連絡が来るだろう」
それで通話は終了。
やったぜ! これで挑戦できる!
ミーちゃんの事? そんなの後だ、後。




