展示場
明後日にはコルラド国の王都に到着予定だ。
聞いた話だと、ダンジョンのあった町以降は村は無く、全て町なんだそうだ。
イヤだなぁ、人が多いなんて。
変態に会うイメージしかないよ。
極力人に会わないようにするしかないか。
夕方には町に到着し、宿屋に入った。
一応警戒の為に主人に聞いてみる。
「あの~、この宿には変態は泊まってませんよね?」
「変態……ですか?」
「変な嗜好の持ち主とか、何かに異常なこだわりがある人とか、そういう人ですよ」
「あぁ、そういう人。泊まってませんよ。うちとしても困るからねぇ」
「そうですよね。ハハハ」
「まぁ、うちの隣の家には住んでるけどね」
近所に居るのかよ!
恐ろしい国だな!!
「隣の婆さんは魔法道具が好きでね。色々な物を買い集めてるんですよ。
ちょっとした展示場みたいにしてあるから、見に行くと面白いですよ?
入場は無料ですしね」
何だ、その程度か。
それなら暇つぶしに行ってみようか。
良い物があれば何処で買ったのか教えてもらえば良いし。
って事で、皆で婆さんの所に行ってみる。
なかなかの大きい屋敷で、お金持ちなのが判る。
門番の人が居たので話しかけた。
「すみません。隣の宿屋で聞いてきたんですけど」
「ああ、見学かね? このまま玄関から入れば良いよ」
「えっ? そんなので良いんですか?」
「ああ。1階は全て展示場になってるから、好きな所を見て回ると良い」
「はぁ。それ大丈夫なんですか? ほら、盗難とか」
「大丈夫、大丈夫。全てケースに入ってるしね。
それに各部屋に警備員が一人は居るから、問題無いよ」
「お金持ちなんですね」
「この国一番の商家だからね。
しかも『お金は貯める物じゃない。使う物だ』って家訓があるくらいだから」
凄いな、お金持ち。
まぁお金は使う物っていう考えは判るな。
一握りの人達がお金を集めても経済は発展しない。
お金が動いてこそ、景気が良くなるのだ。
「じゃあ、見学させてもらいますね」
「おう。そうそう、6時には閉館だからな」
「判りました」
屋敷に入ると、玄関から既に展示してあった。
何々、『靴を磨く魔法道具』か。
横にあるのは『消臭の魔法道具』に『靴の裏の泥を落とす魔法道具』。
便利なのや、どうでも良いのまで色々あるなぁ。
靴の裏の泥を落とす魔法道具は展示物以外に、使用できる物が置いてあった。
汚れては無いが、使ってみた。
これははっきり言って、玄関に置いてある泥落としマットだね。
何が違うかって、乗るとブラシの部分が回転する。
しかも同じ方向にしか回転しないので、両足で乗ると運ばれてしまう……。
開発者はバカなのか?!
この後、バラバラになって展示物を見て回った。
役に立つ物からどうでも良い物まで、さまざまな物が展示されてる。
役に立つ物で良いなと思ったのはエアコン。
正確には冷風扇か? 扇風機の前に網があり、そこに氷が出来る仕組み。
そこを通って風を送るようになっていた。
冬にはその網が熱を持つように出来るらしい。
役に立たない筆頭商品は、ライター。
火をつける魔法道具だから、一応ライターって呼んだだけだが。
まず大きさ。10cm角で厚みは3cmと不便なサイズ。
仕組みがまたすごくアホらしい。
ボタンを押すと、自動で中に入っているマッチ棒を擦りそのマッチ棒が先の穴から出てくる。
一度しか擦らないので火が付かなくてもマッチ棒が出てくるのだ。
これ、マッチを持ってりゃ良いだろ。
もしくは魔法を使うか、あの丸い石で十分だ。
ちなみにマッチ棒の装填数は3本だけ……。いらないわー。
6時になったので、帰ろうと玄関に向かう。
アホな物もあったが、なかなか面白かったな。
玄関を出ようとした時、2階からお婆さんが降りてきた。




