異世界の食堂
その日の夕方、町に到着した。
町と言うよりも街って感じ。
そう、かなり発展してるのだ。
何故かと言うと、理由は簡単。近くにダンジョンがあるから。
それを聞いて思い出した。
多分、それはユニコーンがボスのダンジョンだわ。
道中にあるって聞いてたし、間違いないだろう。
今日はこの町で泊まる事にした。
ダンジョンにも行ってみたいが、それは帰りだね。
どうせなので、宿屋の主人に美味い物を出す店を聞いてみた。
すると「安らぎ亭」という店を紹介されたので行ってみる。
安らぎ亭は、デカい店だった。
はっきり言って、ファミレスだよ!
異世界でファミレス!
確かにそんなにハズレは無いメニューだし、値段も相応だけどな。
なんかさぁ、そうじゃないじゃん?
冒険者が集まる居酒屋とかさ、そういうのを期待するじゃん?
なのに、まさか夜なのに子供まで居る店って……。
治安が良いって事でもあるんだろうけどさぁ。
諦めて店内へ入る。
さぞかしナグラさんもガッカリしてるだろうと思って見れば、意外にノリノリだった。
そういえば、病気で出られない生活だったんだっけ?
うう……かわいそうに。好きな物を頼みな。お兄ちゃんが奢ってあげるよ。
って、支払いはいつも俺だけどね。
案内されたテーブルで、メニューを開く。
せめて変わった物でもあればと期待したが、載っている物はハンバーグやらパスタやら……。
しかも注文すれば、サラダバーが付いてくるらしい。
ドリンクバーは有料だが、他に注文してれば安くなるそうだ。
本当にファミレスだな!
違う点と言えば、ドリンクバーが本当にバーカウンターになっている事。
今も女性と男性の二人が来た客に飲み物を出している。
そりゃそうだ。さすがに機械は無いわな。
それに機械よりも女性に飲み物を出してもらった方が嬉しい。男だもん。
ついでに言えば、ドリンクバーに居る二人は美人とイケメンだ。
こうやって客を集めてるんだろうね。さすがです。
美味しいけど納得の出来ない夕食も終わり、家に帰って就寝。
翌日、さっさと町を出ようとしたら馬車の前に男が立ちふさがった!
カンダさんが大声で怒っている。
「おい! 危ないだろうが!!」
「ワシはその馬車に乗っている人に用があるんじゃ!!」
誰の事だ? モリタ君か?
う~ん、そうだとしても厄介事にしか思えない。
ここは俺が出て追い払うとしよう。
何で護衛に任せないかって? 女性には任せたくないし、カンダさんだと怪我させるかも。
俺なら運で無力化出来ると思うし、そんなに手間じゃない。
そう思って馬車を降りると、その爺さんは俺を指差した。
「そう! あんたじゃ!」
「俺だったのかよ!」
「あんたに用があるのじゃ! あんた、モンスターを飼って居るじゃろう!」
「従魔の事か? まぁ居るけど、何か迷惑をかけたか?」
「違う違う! ワシに譲ってくれぬか?!」
うっ! こいつは前に出会った変態と同じか?!
ジジイが、こいつはカワイイのぅハアハア、なんて許されないぞ!
前の変態も女性だからまだ許容出来るんだ! いや、出来ないわ。ゴメン。
「譲らないよ。何で譲らなきゃならないんだよ」
「食いたいからじゃ!!」
「食う?!」
「モンスターは倒すとドロップ品を出して消えるじゃろ? 食べたくても食べる事が出来ん。
その点、従魔なら消える事無くそこに存在しておる! 獣と同じじゃ! なら食べられるはずじゃ!!」
わーお! 出会った変態の合体バージョンだ!!
しかも危険な思考と嗜好!
俺はすばやくジジイの背後に周り、持っていたロープで手足を縛って道の縁に放っておいた。
頼むー頼むーって聞こえてくるが、無視だ無視。
いずれ警察にでも連れて行かれるだろう。
馬車に戻り、ちょっと考える。
そもそも、例えばだけど、ファントムなんて食べられるのか?!
ヒヨは猫と言えば猫だから食べようと思えば可能かもしれないが。
レイみたいなスライムはどうだ? トコロテンみたいな感じ?
『……恐ろしい思考が流れて来た』
『コウモリって美味しくないっすよ……』
『危険が危ないにゃ!!』
『人食い馬車が人に食われるなんて……』
あっ、ゴメン。思考が従魔に流れてたみたいだ。
腕時計とフードと膝の上と、ついでに馬車が微振動してるわ。




