ルーレット
さて、何故俺が低額を選んだか。
まぁ簡単な事だ。
一撃で大ダメージ受けるよりも、ジワジワとダメージ受ける方がイヤでしょ?
そういう事。ブラックリストみたいなのに載せる店なんか知るか!
まぁ、後は初期投資が少ない方が良いってのもある。
10が5枚で5000円だ。
万が一、ディーラーに俺の運が効かなかったら?
1発勝負で200万とか賭けたら大損だろ?
5000円を膨らまして行った方が安全じゃないか。
それに、1回の勝負が5分かかるとする。
1時間で12回勝負する事になる。
ルーレットの最大オッズは36倍だから、1回で18万稼げる。
18万×12回=216万儲かる計算だ。
で、万が一ディーラーに俺の運が効かない場合でも5000円の損で済む。
ハイリスクハイリターンよりもローリスクミドルリターンの方を選ぶのは当然だろ?
儲けは少ないけどね。
全財産を(多分3000万くらい)突っ込めば儲かるけど、危険だ。
一文無しにはなりたくない。
という事で、早速スタート。
カウントを忘れない為にも、1から順番に賭けて行こうと思ってる。
1つの数字にずっと賭けても良いけど、インチキくさいじゃない?
ディーラーが「ベットしてください」と言う。
だが、俺はまだベットしない。
ディーラーがルーレットを回し、玉を投げ入れる。
良し、ではベットしよう。こうしないとインチキしたように思われるからね。
1に10のチップを5枚置きつつ『玉が1に入りますように』と祈る。
ルーレットの上で玉が飛び跳ねる。
そして、俺の希望通り1に入った。
うん、このディーラーには俺の運が通用するようだ。
多分途中でディーラーが代わるだろうから、そこからが勝負だな。
結果だが、全勝した。
ディーラーが4回も代わったが、何の問題も無かった。
そしてこの台だけ異様な雰囲気だ。
何故かと言うと、ウエダさんモリタ君は当然ながら、台に居た全員が俺の賭ける場所に賭けたからだ。
そりゃそうか。1対1の対戦じゃないんだもん。
強運の人間に乗るのは当然だわな。
いつもヒソヒソと失礼な事を言ってるヤツラも、ボロ儲けしてホクホク顔だ。
だが、俺はお前達を許してないからな! バイ扱いしやがって!
「さすが帝王だ!」「乗っからないヤツはバカだよな!」「帝王じゃねぇ、帝王様だ!」「そうだな!」
「おっ、もう止めるみたいだぞ?」「じゃあ俺も止めよう」「俺も」「俺も」
ちぃ! 止めるのかよ!
その金を賭けたら誰も賭けてない所で止めてやろうと思ったのに!
「いやぁ、今日は帝王様のお陰で儲かったな!」「ありがてぇぜ!」「足向けて寝れねぇな!」
「よーし、今日は帝王様をもてなすか!」「そうだな! 皆金出せよ!」「勿論だ!」
「ここでケチるヤツは運も見放すぜ!」「カジノの町で一番美味い酒を出す店に連れて行こうぜ!」
「「「そうしよう!!」」」
何だ、良いヤツラじゃないか。
オゴリで美味い酒か。なおさら美味く感じそうだぜ。
誰だ! チョロいとか考えたヤツは!
俺は皆の好意を受け止めただけだぞ! 勘違いするなよ?!




