背後霊?
家に帰ると皆が帰ってきていた。
ミーちゃんとモリタ君はグッタリしている。
やはり女性の買い物には付き合うものではないね。
するとナグラさんがこちらを見て話しかけてきた。
「ねぇ、誰? その女性?」
「は? 女性なんか連れて帰ってないよ?」
「えっ?! じゃあ背後霊?!」
「うぉい! やめろよ! 背後霊って魔法の『ホーリーアロー』で消せたっけ?!」
「あの~」
「うぉ! 声まで聞こえるとは?! ナンマンダブ~、ってお経って通用するのかな?」
「結構冷静ですね」
「冷静じゃなくてパニクってんの!」
「あの~、いい加減気づいてもらえますか?」
その声に振り向くと、どこかで見た事のある女性が。
って言うか、さっきの冒険者の人じゃないですか!
も~脅かさないでくれよ~。
「あれっ? 何で居るの?」
「恥ずかしながら……さっき後ろに隠れた時に服が引っかかりまして……。
そのままココまで来てしまいました……」
「声掛けてくれれば良かったのに」
「いえ、何度も掛けましたよ?」
「えっ?」
「えっ?」
全く気づかなかった……。
何故だ?! 歩きスマホとかしてなかったぞ?!
俺はあの時、どうしてたんだっけ?
あぁ、そうだ。
もうイベントは良いです、お腹一杯です、って思って、早足で裏口から帰ったんだっけ。
そういえば何か声が聞こえてたような……。
それもまたイベントかと思って無視してたんだった。
それに放置した男も居たからね。
そいつが叫んでる可能性もあって、耳を塞いでた気も……。
「確かに何か声がしてた気がするわ。すいません……。
ちょっとナグラさん、外してくれないかな?」
「いいけどさぁ。結局誰なの?」
「あれっ? ナグラさんは知らないっけ? タルーンさんの所で助けてもらった冒険者の人だけど」
「タルーンさんの所で? 助けてもらった?」
「ほら、ヒハラ? トハラ? チヒロ? え~、ほらイケメンが絡んできた時だよ」
「そんな事、無かったわよ」
「……じゃあナグラさんと出会う前です。ほら知ってるでしょ?」
「知ってる訳無いでしょーが!!」
どうやら知らないようだ。
って事で外してもらいながら、当時の事を説明した。
「ほ~、つまりナンパした女性って事ね?」
「ちゃうやん! 協力してもろたんや!」
「何でエセ関西弁なのよ?」
「何で関西弁なんだろ?」
「自分の事でしょ!」
というか、何でこんなに俺が責められるのだろうか?
大体、ナンパなんかしてないっての!
「で、今回も「やあ! 久しぶり!」とか言って、声をかけたんでしょ?」
「ちゃうねんっちゅーの! 階段降りたら出会ったんだっちゅーの!」
「動揺して、変な口調になってるわよ?」
動揺なんかしてない!
ナグラさんのジト目がイヤなだけだ!
も~、背中に変な汗が出てきたぞ。
「有罪ね」
「ギルティっス」
「何でコタニさんまで! コタニさんはあの時居たでしょ?!」
「あの時は『この男、バカっスね~』としか考えて無かったっス」
何故2人に増えた!
そして、何が有罪なのか?!
ヤベェ。何でか判らないが、俺の運がガンガン増えてる気がするぜ!




