魔力を流す?
この飛翔の靴、確か魔力を使うって言ってたよね?
靴に魔力を流せば良いのか?
いや、そもそも魔力の流し方が判らない。
いや、知識としてはあるよ? でも知ってるのと実践出来るのは別でしょ?
どうしたら良いのかな?
とりあえず足の裏に力を入れてみる。
うん、何も起きない。
そりゃそうだ。それで魔力が流れるなら、歩いてるだけでMPが枯渇するわ。
次に足の裏に意識を集中してみる。
ムムムムム……あっ、なんか足の裏がかゆくなってきた。
これも失敗か~。
もしかしたら魔法のように起動するワードがあるのか?
もしそうだとしたら、ワードが判らないと使えない……。
う~ん、どうしたものか……。
悩んでると、ナミちゃんが顔を覗き込んできた。
「どうしたの? お腹痛い?」
「違うんだよ。使い方が判らなくてさ」
「使い方?」
「多分魔力を流すんだと思うけど……」
「ふーん。何で流さないの?」
「いや、何でって言われても……あれ? ナミちゃん、流し方知ってるの?!」
「知ってるよ? 何言ってるの?」
わーお、まさかの援軍が目の前に!
でも何で知ってるんだろう?
「え~と、ナミちゃん。どうやって知ったのかな?」
「レベルが上がると覚えるの。覚えたでしょ?」
「えー……」
はい、全く知りません。
現在レベル50ですが、そんな経験は1度もありませんね。
もしかして、子供の頃にレベルが上がると覚えるのか?
ほら、子供がいつの間にか色々な事が出来るようになってる、みたいな。違うか?
そうなると、大人でレベル1で放り出された俺には無理な事ですね。
これは事案ですな。アサイさんに、いやイイクラさんに聞いてみなくては!
いや、それよりも今目の前に先生が居るじゃないか!
大人に聞くよりは情けなく無いハズ!
「ナ・ナミちゃん? ちょーっと魔力の流し方を忘れたみたいなんだよねー。
良かったら、俺に教えてくれないかなー?」
「えー? 忘れる事なんか無いでしょー?」
「ど・どうしてかなー? この間、ダンジョンで頭を打ったからからかなー?
おかしいねー? で、教えてくれるかな?」
「しょうがないなー。教えてあげるよ」
良し! 俺、グッジョブ!!
大人としてはかなり恥ずかしいが、先々で知らないまま過ごすよりはマシなハズ!
「えっとねー。魔力の事を考えてねー。流す所に流すの!」
……恥を忍んで大人に聞けば良かったかもしれない。
ホウズキさん辺りなら、詳しく説明してくれそうだ。
何、その説明! 意味が判らないよ!
だが、ここには俺とナミちゃんしかいない。
ノートルダムにも行きたくないし。
しょうがない。言われた通りにやってみるか。
魔力の事を考える、ね。
よくあるのは丹田、ヘソの下辺りにあるって話。
想像してみたけど、何も起きない。
次に単純に魔力=MPという事で、ステータスを開いて現在の数値を見てみた。
MP:930/1330
これが現在の数値。400ほど減ってるね。
で、残ってる930を想像してみる。
そうだなぁ、判りやすくお金で考えるか。
930だから930円。うん、少し判りやすくなった。
考えるって言うから、もう少し具体的にしてみよう。
500円が1枚、100円が4枚、10円が3枚。
これで930円。あっ! 何かいい感じになってきた!
で、靴に魔力を流すんだな!
これは貯金箱を想像する。
靴にコインを入れる所があるイメージだ。
そこに10円を入れるように想像する。
あれっ? 入らないぞ?
もしかして単位がデカい? 10円を1円10枚と想像して1円を入れてみる。
あっ! 成功した!
靴が鈍く光ってる!
これが魔力を流すって事か!!
後で、同じ転生者のナグラさんにも教えてあげよう。
フフフ、ちょっと優越感!




