戦闘の報酬
持っていた解毒剤のビンををジローの口の中に入れ、ドバドバと流し込む。
ついでに傷口にもかけておいた。
しばらくすると毒の効果が切れたようで、ノロノロと起き上がってきた。
「あ~、ヒドい目にあった……」
「だから言ったであろう。早く降参するのだ、と」
「やっと意味が判ったわ。あれは恐怖だ……」
「死なないのに死の恐怖が迫り来るからな。しかもそれが繰り返される……。正に地獄よ」
「同感だ……」
そんなに怖いのか。
封印した方が良い戦法なのかな?
……いや、俺が死なない為にも多用して行こう。
「さて、俺の勝ちで良いのかな?」
「う・うむ。そなたの勝ちだ。異論は無い」
「良かった。じゃあ報酬を貰おうか」
「ん? 報酬? そんな話はしてないが?」
「あれ? 無理矢理戦わせておいて、報酬無し?
困ったなぁ。じゃあもう一回毒を……」
「!! 報酬か。何が良い? 希望を申してみよ」
「あれ? 負けたのに偉そうだなぁ?
えっと、ミスリルのレイピアは……」
「すみませんでしたー! なんなりとお申し付け下さい!!」
ミノタウロスが土下座した。
土下座と言うよりも、本来の牛の姿に戻ったみたいに見えるけど。
「えっと、タローの時と同じで、ここのダンジョンのモンスターの情報を頂戴」
「はあ。それでよろしいので?」
「えっ? 他に何かあるの?」
「い・いえっ! 別に!!」
うん。これは何かあるな。
レイピアでツノを叩きながら聞いてみる。
「何かある口ぶりだよね~。何があるのかな?」
「い・いえ、あの、そんなにツノを叩かれると、あの、頭に響くので、あの、止めて欲しいのですが……」
「何があるのかな~」
「あ・ああ・あああ・あああ、本当に止めて下さい! 言います、言いますから!!」
喋ると言うのでツノを叩くのを止めた。
へ~、頭に響くんだね。 骨と繋がってるからかな?
「で、何があるの?」
「まずはこの山で採れる鉱石です」
「鉱石?」
「魔石や鉱物、後は宝石ですね」
宝石という言葉に女性陣が目を輝かせだした。
異世界でも女性は光り物が好きなのね。
まぁ、貰って損は無いか。売れば大金になるだろうし。
「他には?」
「ダンジョンのモンスターのドロップ品ですね」
「あぁ、タローの時も貰ったね」
「そうでしたか。似たような物になると思います」
あれ、まだ風呂敷に包んだままで分類してないんだよな~。
色々入ってそうなんで、面倒なんだよ。
全部お土産と称して王様の部屋にでも置いておくか。
「他には無いの?」
「え~、私のツノ……ですかね」
「ツノ?」
「はい。5年に1度抜けて、新しく生えるのです。その抜けたツノですね」
「抜け毛みたいなものか」
「そんな価値の無いように言わないで下さい!
一応、人間達の間では貴重品のハズです」
そうなの?
女性陣に聞いてみるが知らないと言う。
モリタ君も知らないそうだ。ミーちゃんは知らないよな。
となると団長だ。
「団長、知ってますか?」
「聞いた事はありますね。確かそれで防具を作るとか」
「防具ですか? 武器ではなく?」
「ええ、そう聞いております。私も詳しくは判りませんが」
そうなんだ。じゃあ、タルーンさんにでも聞いてみよう。
「じゃあ、全部頂戴。あっ、ツノはココに居る人数分頂戴ね」
「えっ! ひ~ふ~み~、って6人も居るじゃないですか!」
「いやいや、従魔のシロの分もくれ。だから7人分かな?」
「そんなには、ちょっと……」
「そこに立派なのが付いてるじゃないか。それ、取っても良い?」
「ひぃぃぃ!! 判りました、7人分ですね!! 用意します!!!」
快く引き受けてくれた。交渉成立だね!




