トムさん謝る
実は実際にはまだメールしてない。
そんなに早く出来るわけないじゃないか。
写真だけ送られてきても意味が判らないだろうしね。
その偉そうな態度では話にならないと思って、まずは逃げられないようにしただけですよ。
それに、あのバカにしたような罠にもムカついてるしね。
ジローが落ち込んでる間に、トムさんに魔法で『メール』をする。
『ジローと出会いました。来てください。5分後に呼びます』
これでOKだろう。
都合が悪ければタブレットの方に返信が来ると思う。
5分後、トムさんを召喚する。
現れたトムさんは、何かバツが悪いような顔をしていた。
おや、何かあったのかな?
「ごめんなさい! 福田さん!」
「はっ? 何をいきなり謝ってるんですか?」
「ジローがこうなったのって、私が原因なのよ……」
「ほほぅ……詳しく聞きたいですねぇ」
トムさんは諦めて語り出した。
「福田さん、タローの所とジローの所に行くって言ってたでしょ?
タローは面識あるから良いとして、ジローには教えておいた方が良いと思って」
こないだ尋ねた時に、アサイさんが1人でいたね。
あれってサボりじゃなく、留守番だったのか。
いや、留守番という大義名分を得てサボってたんだろう。
「で、話をしてたんだけど、ちょっと言い争いになって……」
「言い争い?」
「えぇ。その、あの……」
言い争いの原因を、何故か言いよどんでいる。
何だろうか。嫌な予感がするなぁ。
「何が原因で言い争いになったんですか?」
「え~~~~、実は福田さんの強さについてなのよ……」
「強さ?」
最近もそんな話をしたなぁ……。
ヤバい、モリタ君の目が輝き出したぞ?!
さっきまでは突然現れたトムさんに驚いてたのに。
「福田さんの強さを説明したんだけど、納得しないのよ。
タローをボコボコにしたって教えたのに、タローが弱いからだ!なんて言うし」
「いや、ボコボコにしてないですよ?」
「えっ? 相手の出した条件を利用して死ぬほどのダメージを与えたじゃない。
それってボコボコにしたって言えるでしょ?」
「いやいや! それにダメージを与えたのは俺だけじゃないですよ?!
ほら、そこに居る女性二人も……って、いない!」
いつの間にかコタニさんとナグラさんは消えていた。
いや、違う。団長の影に隠れていた。
会話の流れから推測して逃げたのだろう。
しかも「ミノタウロス怖~い」って言いながら隠れてる辺り、モリタ君への牽制か?
さっきまでミノタウロス見て笑ってたくせに!
「で、言い争ってる内に、福田さん達がこのダンジョンに来たのよ。
最初は見てるだけだったの。そしたらあっけなく5階まで来たじゃない。
それでジローが動き出したのよ」
「5階? 何か意味が?」
「5階から迷宮でしょ?」
「そうですね。……あっ、罠?!」
「そうなの。マップは変える事が出来ないけど、設置している罠をイジる事は可能なのよ」
「モンスターは?」
「リポップとかもイジれないわ。ただ、既に居るモンスターを誘導する事は可能ね。
でも1つだけ後からイジれる所があるの。判るでしょ?」
「モンスターハウスか……」
「そう。違和感無かった?」
そうだ。モンスターハウスは異常だった。
他の階のモンスターまで登場してたからな。
そんな事は今まで無かったのに。あれはジローの仕業だったのか……。
「それをあっけなく全滅させたでしょ?
で、低い階層の敵じゃ強さが測れないってなったのよ。
だから、早く強いモンスターが居る階に進んで欲しくて、罠をチャチくしたの」
罠がショボかったのは、バカにする為じゃなく突破させる為だったのか。
「9階についた所で、福田さんが叫んだでしょ?
アレでこちらの意図に気づいたと思って、ジローが出て行ったのよ」
はい、全く気づいてませんでした。
バカにされたと思ってました。
恥ずかしいので気づいてなかったとは言わないけどね!




