ジロー
そこに現れたのは、やはりミノタウロスだった。
まぁ、それは良い。予想通りだったからな。
冷めた目で見てしまうのは仕方無いだろう。
タローと登場が同じだから?
いやいや、そんな事は無い。
では、何故か。
それは……俺、罠に近寄って調べたって言ったよな?
で、ミノタウロスは目の前に出てきた訳で。
そう、こいつは登場と同時にシッポをトラバサミに挟まれたのだ!
「我を呼んだのはお前だな?」
どうもコイツは防御力が高いのか、挟まれてる事に気づいて無いっぽい……。
威圧的に喋ってるが、ちっとも怖くない!
かっこつけて喋ってる分、凄くマヌケだぞ!
皆もそれに気づいてるようで、笑いを堪えてプルプルと震えている。
そう、モリタ君でさえ怖がらずに怖がって無い。
だが、ミノタウロスは勘違いした。
「我を見て震えるか。当然だ。お前らに勝てる相手では無いのだからな」
うん、勝てない。そんな体を張ってギャグをするような者にはね!
しかし、このままではダメだ。話をしなくては。
「凄いですね。ドラゴンでさえ貴方《のマヌケさ》には勝てませんよ」
「ドラドンか。そうだろう、そうだろう」
褒められたと思ったようだ。それが一層笑いを誘う。
ちなみに《》内のは俺の心の中の声だ。
なのに何故か皆には判ったようで、プルプルが加速してる。
近い内に崩壊するだろう。
「このダンジョンのボスとお見受けします。《笑い者にする為に》名前を窺ってもよろしいでしょうか?」
「ふん。特別に教えてやろう。我の名はジロー!」
思い出したわ。そうだ、ジローだったな。
今回も皆が俺の心の中の声を聞いて震えている。
いや、とうとう崩壊してしまった。
「アハハハハハ! もう、止めてよ~。お腹痛い!」
「ナグラさん、笑いすぎだよ。プークスクス!」
諌めるつもりが、俺も堪え切れなかったよ。
だが、それを見たジローは激怒してる!
「貴様ら! 我を愚弄するか!!」
しょうがない。教えてあげようか。
いや、その前に記念写真だ!
たしかタブレットにそんな機能があった気がする!
はい、チーズ。パシャ。最高傑作が出来た!!
「貴様! 今何をした!!」
「えっと、写真を撮って、知り合いにメールしました」
「何の為にだ!」
「え~、気づいてないようなので教えてあげましょう。
アナタ、シッポが罠にかかってますよ。プークスクス」
それを聞いたジローは、怒りで真っ赤だった顔が羞恥で真っ赤になった。
って変わらないんだけどさ。
そして問題に気づいたようだ。
「おい! 知り合いとは誰だ! まさか……!!」
「あっ、想像通りです。アサイさん・イイクラさん・閻魔様・トムさん、この4人に送りました!!」
「オーマイゴッド!!」
とうとうジローは膝から崩れ落ちた。
何故英語?
さて、話をする為にトムさんでも召喚しようかね。




