非常事態宣言
ダンジョンに戻ろうと『コネクト』を使おうとしたら、ヌマタ卿に止められた。
「まだ話は終わってませんよ」だってさ。帰らせろよ~。
もうお腹一杯ですよ?
「その者の特徴を教えて頂きたいのですよ」
「何でですか? 指名手配でもするんですか?」
「罪に問われて無いので指名手配なんか出来ませんよ。
ただ、注意喚起くらいは出来ます。同じ様な目に合う人を減らすためにもね」
「そりゃそうか。納得です。ではモリタ君、どうぞ」
「ええと……長髪でした」
「サーファーっぽいロンゲ?」
「茶色くないです。黒髪です」
「オタクみたいなロンゲ?」
「そんなんじゃありませんよ」
「肩まであるロンゲ?」
「そこまでじゃないです」
「カットしてないだけのロンゲ?」
「いえ、清潔な髪です」
「じゃあどういうロンゲさ!」
「あ~もう! じゃ長髪じゃないです!」
「えっ?!」
「いや、カツラかもしれないですし……。別に、しつこいから説明を諦めた訳では無いですよ?」
髪型だけでクドかったか?
でも大事だしな。わざとしつこく聞いた訳じゃ無いよ?
俺じゃいつまでも進まないと思ったのか、ヌマタ卿が聞き出した。
「他の特徴は? 変装では変えられない部分だ」
「えっと……目は黒目でした。他には……あっ! 歩く時に少し右足を引きずるようにしてました」
「う~ん、それもわざとの可能性があるからね。他には?」
「そうですよね……他には……」
一生懸命思い出しているようだが、やはり怪しいヤツだしすぐ判るような部分は隠してるだろう。
「体の欠損とかが一番なんだがね。無かったかね? 傷は?」
「傷……欠損……あっ!」
「どうした? 何か思い出したか?」
「はい! 何で長髪何だろうと当時も思ってたのですが、理由が判明した事がありました!」
「ちょ~と、ストップ! 何で長髪がダメみたいに言ってるの?」
「福田さん。軍や冒険者に長髪は居ませんよ?」
「そうなの?! 理由は?」
「単純に、視界の邪魔になります。
それに相手が人間の場合、髪を掴まれてしまいます。不利になるのですよ」
あ~、納得。
それに髪を掴むって話は聞いた事あるわ。
だからヤ○ザは短髪だとか。
「納得しました。止めて悪かったね。続きをどうぞ」
「え~と、長髪の理由でしたね。
一度だけ左耳が見えた事があったのですが、耳たぶがありませんでした。
それを隠してたのかと、当時納得しました」
「ほう。……それは傷だったかね?」
「……多分、傷と言うか怪我だったと思います」
「よし、それは誤魔化せないな。よく思い出したな。
これで注意喚起出来そうだ。もし、発見した場合は福田さんに伝えてあげよう」
「えっ、あっ、ありがとうございます!」
注意喚起と言いながら、探す気なのですね。
ツンデレか?!
なんてね。表立って探す事は出来ないだけだね。
何の犯罪も犯してないから。
よし。もう少し協力してもらうか。
丁度王様も居る事だしね。
「王様。野放しにしてると、ハズキ君も唆されるかもよ?」
俺の言葉にハッとした王様。
「いかん! 非常事態宣言だ! 草の根を掻き分けてでも探し出せ!!」
「福田さん! 余計な事を言わないでください!!」
これで少しは本腰入れて探してくれるんじゃないかな。
今ハズキ君の居るノートルダムにも情報が流れるだろうし。




