悪の所業
ヌマタ卿との話が終わった頃、モリタ君も話が終わったらしくこっちにやってきた。
そして俺の手をガシッと握ってきた!
俺にはソッチの趣味は無いぞ!
「凄いです! 福田さん! 尊敬します! 弟子にして下さい!」
「は? ネモト卿、何を説明したの?!」
「いえ、事実を全てそのままに」
「それでこうなる訳無いじゃん!」
「何を言ってるのですか! ドラゴンさえ恐れる強さだと聞きましたよ!」
はぁ?! どこからそんな情報が?!
……団長だな?
チラリと団長を見ると、顔を背けられた。
「それに……なら……可能……」
「ん? 何か言った?」
「いえ! 何でもありません!」
そうか、気のせいか。
それよりもこの状態をどうにかしないとな~。
な~んて言うと思ったか!
俺は難聴では無いんでね! それにそんなフラグのような呟きを逃す訳無いだろ!
気づいたのに、気づかない振りをする? そんなのバカのする事だよ!
日本でならまだしも、こんな死が隣に居るような所でそんな事するか!
何か有ればその時に対処する?
そんな予測が出来るほど頭良く無いし、その時には回避不可能な大事に巻き込まれてるわ。
で、自重してるのに何でこんな事に?なんて言うのか? アホだぞ、それ。
「って事で、吐け!!」
「何が『って事』なのか判りませんが、何でもありませんって!」
そう言いながら俺の手を離そうとする。
逃がすかよ!
逆に握ってやったわ!
ついでに従魔も呼び出して包囲する。
ガー、チョロ・シロ・ヒヨと勢ぞろいだ!
あっ、ヒヨは足元で寝てるけど。
さすがにトムさんは呼ばなかった。ここでは有名だからねぇ。
「逃げられないぞ! さぁ、喋れ!」
「ななな・何でもありませんって!!」
「ほう……。まだ言い逃れするか……。
それ以上言い逃れする気なら、コルラド国を滅ぼしてくれるわ! ウハハハハハ!!」
「どこの悪党ですか!!」
俺の言葉にモリタ君は「悪党」で済ませたが、2人の貴族はそれでは済まなかった。
顔を青ざめさせて、怒鳴るように進言してきた。
「モリタ殿! 素直に話した方が良いです! ヤバいですって!」
「福田さん! 国を滅ぼすのは止めて下さい! せめて王族だけにして下さい!!」
「えっ?! 御二方とも何を……? えええええええ?! マジですか?!」
ネモト卿はそのまま止めようとしてるが、ヌマタ卿は何か違うな。
あれか、国が滅んだ後を心配してるのか。
って事は俺が本当にやると思ってるんだな! 失礼な!!
「マジです! その人には可能なのです!」
「地上からはレベル200のケンタウロスが、地下からは大量のアリが。1時間持つだろうか?」
それを聞いてモリタ君も青くなった。いや、それを通り越して白くなった。
さすがにマジだと思ったようだ。
握ってる手も小刻みに震えている。
いや、やらないからね?
後、女性二人、引いてんじゃねぇ!
「すみませんでしたーーー!! 喋りまーーーーーす!!」
あっけなく陥落したな。
それを見てガーは時計に帰り、チョロは俺のフードの中へ。
ヒヨはコタニさんのフードに戻り、シロは女性二人とお茶しだした。
良いなぁ、お茶。俺もそこに混ざりたい。
「で、何て言ったの?」
「……はい。『それに、その力があるなら武具を取り戻す事も可能かもしれない』と言いました」
武具? 取り戻す? どゆこと? なんじゃそら?




