コルラド国
「実は僕は、コルラド国の王子なんです」
これがモリタ君の秘密だった。
ソレに対しての俺達の反応は「ふ~ん」程度だったけど。
「コルラド国ってどこにあるの?」
「えっ? え~と、ニーベル国の南ですね。隣接しています」
「ふ~ん。そうなんだ」
「あの~、皆さん驚きませんね。……もしかして、信じてませんか?」
「いや、信じてるよ。『門のシール』の事も知ってたしね」
「あっ、『門のシール』を使ってるって事は! 貴方も王族なのですね!」
「いや、一般人だけど?」
「はあ?!」
「いやいや、福田さん。貴方は一般人ではありませんぞ。我が国の大臣ではありませんか」
「いや、ムカイ団長。大臣でも貴族じゃないし。一般人でしょ?」
「ニーベル国は、一般人でも大臣になれるのですか?!
ん?! 団長?! 団長とは一体?!
王族でも無いのに『門のシール』を使う?! 訳が判りません!!」
あっ、無茶苦茶混乱してる。
こっちが混乱すると思ってたのに、それ以上の情報を貰ったからパニックなんだろう。
しかし、どう説明したものか……。
うん、面倒だな。
「えっとね、『コネクト』使えるから大臣になって、団長とダンジョン調べに来た。OK?」
「さっぱり判りません!」
「え~、今ので判らないの~?」
「いや、無理がありますぞ?」
「今のは無いわ~」
「判るはずが無いっス」
「俺でも意味不明だよ」
皆がヒドい。
簡潔に判りやすくまとめたハズなのに。
しょうがない。こういうのは、賢い人に頼むのが正解だろう。
って事で採掘場の横の方に『転移板』を設置。
『メール』で『今から行きます』と送っておいて、『コネクト』発動。
問答無用でモリタ君を連れて行く。
着いた先はニーベル国の城の中。そう、王様の私室だ。
メールの相手はヌマタ卿とネモト卿。
バタバタと走ってくる音が聞こえるので、もうすぐ来るだろう。
彼らならうまく説明してくれるよ。
やって来たのはネモト卿。
王とヌマタ卿は謁見中だそうだ。
「本日はどうのようなご用件で?
あぁ、報酬ですか? それなら現在計算中です。受け取りはギルドになるのでそちらでお願いしますよ」
「あっ、報酬の事じゃ無いです。 彼を知ってますか?」
「ん? 彼ですか? ……モリタ殿ではないですか!! 何故ココに?!」
「え~と、ダンジョンで出会いまして。
俺の事を説明してあげてください。俺の説明では判らないようなので」
「そういう事ですか。判りました」
部屋の椅子に二人は座って話し始めた。面識があってなによりだ。
さて、俺達はする事が無いな。戻るか?
そう考えてたらまた足音が。
今度はヌマタ卿が来た。
「何事ですか、福田さん!」
「アレな状況でして」
そう言って、話してる二人を指差す。
それだけでヌマタ卿は理解したようだ。賢い人ってすげーな。
丁度良いので、逆にモリタ君の事やコルラド国の事を聞いておこう。
「モリタ君って王子なんですよね? 何でダンジョンに居るんですか?」
「あの国は実力至上主義なんですよ。王族といえども、甘やかされません」
「はあ。それとダンジョンの関係は?」
「レベルの低い王族は認められないのですよ。なのでレベル上げに来たのではないでしょうか?」
「でも1人でしたよ? 臨時でのパーティーは居ましたけど」
「騎士などを連れてレベルを上げるなんて事は、恥だとされているのです」
「うわ~……」
実力主義の国、ハンパねぇな。
死んだらどうするんだよ。その程度の実力だったって言って、切り捨てそうだな……。
「ちなみに、成り立ちですが。
コルラド国の北、ニーベル国寄りですね、そこにダンジョンがありまして。
そのダンジョンのボスのユニコーンが倒せない事に苛立って、王族含め全員がレベル上げ。
そして挑むも、また敗れ。それを繰り返す内に、実力至上主義になったらしいです」
あっ、前に聞いたわ。そのユニコーンは倒せないヤツです。
それに挑み続けるなんて……そりゃ実力主義にもなるわ。




