馬車?
家に逃げ帰って1時間後、家の前に馬車が止まった。
どうやら今日はすぐにサガワさんと連絡が取れたようだ。
玄関の呼び鈴が鳴る。
嫌な予感がしたので、ナグラさんに出てもらった。
俺はちょっと出かけてるって事にしといて!と伝えて。
予感は的中で、来たのはツバキさんだった。
この短時間で怒りは消えてないと思う。
サガワさんが来てないなら暴走の可能性もある。
いや、エ○ァよりもナウ○カか。
火の七日間になる可能性がある。
「焼き払え!」とか言われそうだ。
ツバキさんは、何か2・3言話して帰っていった。
その際、俺の上着を返してた。
徒歩で帰って行ったので、玄関先に止めてある馬車を貸してくれるという事だろうか。
「ナグラさん、ありがとう」
「何か怒ってたけど、何したのよ?」
「……ちょっと話をしただけだよ。そうしたら地雷原だったみたいで……」
「……ふ~ん。あっ、これ、上着」
「ありがとう。で、何だって?」
「東門に止めてある馬車をお使い下さいってさ。返却はいつでも良いそうよ。
門までは前に止めてある馬車を使ってくださいって」
「判った。じゃあ出発しようか」
あの馬車を貸してくれるんじゃないのか。
東門に行くだけの為に馬車を貸すってどうなのよ。
あっ、そうか。普通ならダンジョン攻略に行くなら荷物が多いハズだもんな。
門まで行くにも馬車が有った方が良いよな。
出る準備はしてたので、全員で乗り込む。
御者はムカイ団長、その横にミーちゃんだ。
ミーちゃんは団長と帰ってきてから大人しい。
どんな特訓をさせられたのだろう?
馬車の中は俺と女性二人……。
これが気まずい! 何か判らないけど居心地が悪いんだ。
なのでヒヨを二人には渡した。
ネコをイジってればこっちには意識が来ないだろうという作戦だ。
だが、これも失敗。
ヒヨは念話が出来る。
でもそれが聞こえるのは、俺・そして俺に触れてる人なのだ。
ヒヨと会話したいらしく、二人は俺の服をチョンと持ってるんだよ……。
パッと見、付き合い始めた中学生か?って思える風景だ。
ヒヨはのんきにじゃれてる。
俺は1人、無の境地だ。
東門に到着すると、誰かが近づいてきた。
よく見ると、見たことある人だ。
あぁ、あの人、サガワホテルの従業員だわ。
スイートルーム前で護衛してた人だ。
「ようこそ。こちらに用意しています。お使い下さい」
「あ・ありがとうございます……」
サガワさんよ~、貸してくれとは言ったけどさぁ~、こんな馬車は無いだろぅ~。
馬が6頭で、馬車は6輪、馬車の全長は6m幅は4mくらい。
馬がいなきゃキャンピングカーだぞ?!
中には簡易キッチンと簡易ベッドまで付いていた。
本当にキャンピングカーだ、これ。
あんまりなので変えて欲しいと護衛の人に聞くと、
「ボディについているのはサガワホテルのマークです。
宣伝にもなるので、使って欲しいとの事です」
との返事が。
くそぅ、サガワさんめ。
俺が断る事まで織り込み済みかよ。
そう言われると使うしかないじゃないか!
豪華な馬車に乗って、まずはウエダさんの居るオオキの村へ出発だ。




