語る!
リビングに到着し、ホウズキさんがお茶を持ってきたら話が始まった。
話の相手は、基本的にナグラさんがしている。
当事者(?)の俺は、ただ聞いているだけです、はい。
「父は真面目な人で、自分の力だけで公爵にまで成り上がりました。
かと言って貴族の地位に縋っているような人間ではありません。
私はそんな父を尊敬しています」
「優秀な人物なのですね」
「そうだと思います。そんな父に私は大事に育てられました。
学校にも通わせていただき、友人も出来ました。
少し私の行動を制限する事もありましたが、過干渉と言うほどでは無かったと思います」
「良いお父さんですね」
~この後、父親の良さを10分近く語る~
「さて、そんな父ですが、私が結婚適齢期になった事を考え、婚約者を探すと言い出しました」
「まぁ、貴族ならありうる話ですね。そうですよね、ホウズキさん?」
「そうじゃな。恋愛結婚もありじゃが、貴族の子なら出会いの場も少なかろう」
「それで紹介されたのが2名。どちらも良く言って普通、悪く言えば面白みの無い人達でした」
「面白いかどうかで決めるのもどうかと思いますが……」
「聞いてください!! だってですね……」
~この後、2名がどれだけつまらないかを20分以上語られる~
「と言う訳なんですよ!! どう思いますか?!」
「ま・まぁ、確かに平凡っていうのは、退屈しそうですね……」
「そうですよね! 父と比べるのはおかしいかもしれませんが、もっとこう覇気と言うか、やる気が見たいのです!」
「一代で成り上がった父親と比べては、さすがに……」
「でもそれを見て育ったのです! 男なら何か成し遂げようとするものではないでしょうか?!」
~この後、「男とは」について30分弱語り出す~
「判ったから、少し落ち着いてください!」
「あっ、すみません……。私ったら熱くなってしまいました……」
「いや、いいんですけどね」
「話は戻りますが、婚約者候補を紹介された翌日です! 福田様の話を聞いたのです!」
「えっと、それはどこから?」
「我が家の爺、あっ爺と言うのは長年我が家に勤めている執事なんですけど、その爺から聞きました!」
「そ・そうですか」
「はい!
他国の外交官ながら、孤児院で子供と一緒に遊ぶ飾らない姿!
我が国の王様と仲良く語られる優秀さ!
暗躍する悪者を陰ながら仕留めていく正義感!
それにですね……」
~この後、俺がどれだけ凄いかを40分以上語り出す~前に止めました。
さすがに恥ずかしいです。
しかも見に覚えが無い事が多過ぎます。
間違い無く盛られてますよ。
王様がした事まで、俺がした事になってたりするし。
止めてください。
俺は異世界転生した、運が良いだけの男ですよ。
そうだ、運。てめー何してんだ! 働けよ!!
まてよ、こういう見た目麗しい(中は別として)女性に好かれるってのは運のお陰か?
てめーなんて言ってすみません、“運さん”と言わせてもらいます。
いえ、“運様”と呼びましょうか。なので、この誤解を解いてください。お願いします。
「だから、私は結婚するならこの人だと心に決めたのです!」
「ソウデスカー、スゴイデスネー」
ナグラさん、もっと頑張ってよ!
思考放棄しかけてるよ!
運様、働いてますかー?!
「どうでしょうか、福田様! 私と婚約していただけないでしょうか!!」
「あー、少し良いかの?」
「なんでしょうか、ホウズキ様?」
おぉ、運様、仕事されましたね?!
ホウズキさんに説得させる作戦でしょうか?
期待してますよ!!




