魔法の登録所
「兄ちゃん、いつまで居るの?」
「あ~、今日帰るよ……」
「え~! 早~い~!!」
「悪い悪い。午前中は城に行って、昼からは一緒に居られるから」
「ぶー! じゃあ昼からは一緒に孤児院に行こうね!」
「それは止めよう! な? な? そうだ! イチゴを食べに行こうじゃないか! ね! そうしよう!」
「う~ん、じゃあそれでいいよ!」
ふう、危ない!
ある意味ゴブリン(亜種)に会いに行くようなものじゃないか!
院長が不在なら行くけどさぁ。
「じゃあ、ちょっと城に行ってくるよ。ハズキ君はどうする?」
「ここで待ってる! 良いでしょホウズキ先生!」
「おう、良いぞ。ではハズキ君はワシが見ておこう」
「すみません、お願いします」
ホウズキさん家を後にし、城へ向かう。
入り口で王に貰った通行手形を出したら、ボディチェックもされずに入れた。
帯剣してるのに良いのかなぁ。
まぁ、それだけ強力な通行手形なんだろうけどさ。
ただ、魔法の登録所は門を入ってすぐにある。
本当の意味で城に入る時は、さすがにされるだろう。されるよね?
登録所に到着すると、ここでも入場のチェックがあった。
騎士の人に止められたので、通行手形を出すと驚いたような顔をして質問してきた。
「貴方が福田様ですか?!」
「様?! 確かに福田ですけど、様を付けられるほどの者ではないですよ?」
「いえ! 城の内部では有名なのです! 貴方様のような方に様を付けない者はいません!」
え~?! ニーベル国ならともかく、何でこの国の城にまで名前が広まってるの?!
ちょっとそこら辺は聞いておいた方が良さそうだ。
「え~と……何で有名なのでしょうか?」
「ご謙遜とは! さすが福田様です!!」
「いや、謙遜とかじゃなくてですね……何で騒がれてるのかが聞きたいのですが」
「騒がれるのがお嫌いでしたか!! では皆にそのように伝えます!!
これからはこっそりと尊敬の目で見させてもらいます!!」
「それはそれで嫌なのですが……」
「それに福田様。私のような下位の者にまで敬語で話される事はありません!」
何だろう? 俺って、いつの間にか新興宗教の教祖様にでもなったのか?
慕われてるってのは判るけど、それが狂信な感じがある。
はっきり言って、不気味だ。
そもそも、何でそうなってるんだよ! 何でソコを教えてくれないのさ!!
後、後ろの女性二人! 引いてんじゃねぇ!!
こうなったらイヤだけど、命令形で喋れば教えてくれるかも。
ただなぁ、それやって引かれたら最悪だよね。
でもいつまでも教えてくれないっぽいしなぁ。
あっ、そうだ! 後で王様に聞こう!!
それが一番確実だ!!
どこまでも低姿勢な騎士を置いておいて、登録所に入る。
そこは登録所と言うよりも、学校の科学室のようだった。
6人くらい座れるテーブルが6個。それぞれに水道やバーナーが付いている。
教壇がある場所は、受付のようになっている。多分そのまま、そこが受付なのだと思う。
で、6人掛けのテーブルで魔法を覚えるのだろう。
色々な器具がテーブルに付いてるのは、実験する用なのか、消火等をする為なのか……。
とりあえず、受付に行ってみよう。
そこで話をすれば、何とかなるだろう。
な~んて思ってたら、さっきの騎士が入ってきて受付の人に何かを耳打ちした。
すると受付の人の目が、キラキラ輝き出した!!
「貴方が福田様ですか!!」
お前もかよ!!
もうそのパターンはお腹一杯だよ!!




