ヒヨと団長
さて、従魔にしたのは良いが何が出来るのだろうか?
説明に有ったように、素早く、夜目が利くのだろうけどさ。
爪と牙で攻撃するようには見えない。
今現在も、俺の膝の上で団長に怯えてプルプルしてるし。
可哀相なので撫ぜてやると、俺の手にスリスリしてきた。
気持ちが良いのだろうか?
ネコにするように喉をコリコリとしてやると、気持ち良さそうに目を細めてゴロゴロと鳴いている。
判った! こいつは癒し担当だな!
だがその一方で、ムカイ団長の顔がどんどん険しくなって行く。
何が気に入らないのだろうか?
「福田さん……」
「な・なんでしょうか?」
「お願い事があるのですが……」
何だろう? そんなにヒヨが嫌いかね? と言うよりもモンスターが嫌いなのかな?
汚物は消毒だ! ヒャッハー!! とばかりに切り捨てたいのだろうか?
「お願い事とは、なんでしょう?」
「……私にもヒヨちゃんを抱かせてもらえないでしょうか?」
まさかの逆パターンとは! しかもヒヨちゃん?!
そんな身なりで可愛い物好きとは!!
まぁ、危害を加える訳では無いようなので、ヒヨを抱いてそっと渡そうとした。
はい、無茶苦茶拒絶しましたよ。
俺の手にしがみついてる。そして爪が痛い。
しかも念話を送ってきたし。
『勘弁ニャ! 殺されるニャ!』
こいつはあざといわ。
語尾にニャを付けるとか、どこまで癒し担当なんだよ!
汚いぞ! そんな事で俺の犬への愛は変わらないぞ……。
そして団長は念話を聞くまでも無く、拒否された事が判ってるようだ。
落ち込み様がハンパ無い。
ドヨ~ンという音が聞こえて来そうな程だ。
マンガなら背景はベタ塗りだろう。
さすがにこのままではマズいので、ちょっとちゃんと紹介しておこう。
「えっと、こっちに居るのがナグラさん。正面に居るのがコタニさんね」
『判ったニャ! よろしくニャ!』
「二人とも、ヒヨがよろしくって言ってるよ」
「わ~! 本当に?! よろしくね、ヒヨちゃん!」
「よろしくっス!!」
二人ともとても良い笑顔ですね。
それに反比例して、団長はドンドン暗くなって行くんだけどさ。
「で、こちらがムカイ団長。優しい人だから、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」
『嘘ニャ!』
即答されてしまった……。
仲間には優しい人なんだけどなぁ。
モンスター(敵)には厳しいってのが本能で判るのかね?
「本当だから! まぁ、すぐに仲良くなれとは言わないさ。ただ、嫌わないであげて欲しい」
『……努力するニャ~』
皆には俺の声しか聞こえてないのでセーフかと思ったが、俺の言葉でヒヨの言った事がなんとなく判ってしまったようだ。
女性二人は、可哀相にという目でムカイ団長を見ている。
団長はさらに落ち込んでいる。
本当に徐々に仲良くなってもらうしかないよな。
話も終わったので、先に進む事にした。
通路を進んで行くと、今度は前にビッグフロッグが現れた!
それを発見したムカイ団長は、八つ当たりの様に切り刻んだ。
それを俺の肩に乗って見てたヒヨは、より一層怖がるようになった……。




