ゴブリン(亜種)
迷路の向こうから来たのは、見た目は全く変わらないゴブリン(亜種)だ。
だが、何を思ったのか、団長がダッシュで近づきボコボコにして倒してしまった!
そしてドロップ品を無視して戻ってきた。
何やってんのーっ!!
「どどど・どうしたんですか?!」
「いや……そうか、この階層に来てしまったか……」
「いやいや、1人で納得してないで、説明してくださいよ!!」
「説明か……。アレは喋るのだ……」
「はぁ。で?」
「だから喋る前に倒したのだよ」
「は? ちょっと理解出来ないんですけど?
喋るという事は、意思の疎通が出来るんじゃないですか?」
「……無理だ」
「無理ですか? あっ、理解出来ない言語で喋ってるとか?」
「……ある意味そうだな。理解出来ない」
「……え~と、詳しく教えてもらえませんか?」
「……説明するよりも対面した方が早いだろう。
だが、その場には私は参加しない。離れた場所に居させて欲しい」
全然理解出来ない。
どういう事なんだ?
あっ、ドロップ品を忘れてた! 何で持って帰ってこないのだろうか?
取りに行こうとすると、時間経過で消えてしまった。
ドロップ品って無視してると消えるのね。
しかし、こうも拒否をするというのには訳があるのだろう。
とりあえず、探して対面するとしようか。
「判りました。ちょっとマップで探してみます。
見つけても攻撃しないで下さいね?」
「了解した。その時は教えてくれ」
マップで探しても近くには居なかったので、しょうがないので運を使って呼んでみる。
すると進行方向に1匹現れた。
「出ました。ここから50m先ですね」
「そうか……。では私はここで待機している。
すまないが、倒したら教えてくれないか?」
「……それは良いですけど。そんなにイヤですか?」
「姿も見たくない!」
「そうですか……」
一旦団長と別れ、正解ルートを進む。
角を曲がると、そこにはゴブリン(亜種)の姿があった。
武器は何も持ってないようだ。
それどころか、手を上げて近寄ってくる。なんだ、友好的じゃないか。
「やあ!」
「あっ、どうも……」
しかもえらくフレンドリーに挨拶してきたよ?!
言葉も通じるようだし、どこに問題があるんだろう?
そう思ってみてると、ゴブリンは背負っていた台を地面に置いた。
座るのか?と思ったら、その上に立ち上がって一言。
「ダンジョンで壇上」
「はい?」
「はい、頂きました! ハイハイすると灰が付いちゃうよ~」
「何言ってんの?」
「言ってんの、頂きました! 一点の曇りも無いって言ってんの(笑)」
「おい!」
「おい、頂きました! オイの甥は美味しい物が好きなのさ!」
凄くイラっとする!! 何だコイツは!!
俺の言った事を拾って、ダジャレばっかり言うぞ?!
もしかして、団長はコレがイヤなのか?!
いやいや、それだけであんなに苛烈に攻撃しないだろ?
もう少しコミュニケーションを取ってみよう。
「何か話してくれないか?」
「では。アメリカンジョークを一つ」
「何故アメリカンジョーク?!」
「先日、息子が俺にこう言ってきた。『何で赤信号で皆止まるの?』ってね。
だから俺はこう言ってやった。『いや、そういう決まりだからね』ってね! ハハハハハ!!」
「……どこがジョークだよ!!」
「そしたらまた息子が言ってきた。『誰が決めたの? 誰が決めたのー?!』ってね
「あっ、まだ続いてたのね?」
「だから俺はこう言ってやったのさ。『誰か偉い人なんじゃないか?』ってね! ハハハハハハハハ!!」
「……オチが無い!!」




