アリとの事情
俺はアリを連れて通路の先に慌てて連れて行く。
アリもムカイ団長も驚いている。
「おいおい、王様とか言うなよ!」
「でもですね、王様……」
「良いから! 王様って呼ばないで!」
「わ・判りました! では何と呼べば?」
「名前で良いよ! 福田と呼んでくれ!」
「判りました。福田様」
「様もいらないから!」
「え~、困りましたね。では福田殿、でどうでしょう?」
「……もう、それで良いよ。よろしくな」
「はい! それでですね、このダンジョンに居る他のアリにも通達してよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだな。会う度に説明するのも面倒だし。お願いするよ」
良し! これで大丈夫だろう。
アリと共に皆の所に戻る。
さて、次はムカイ団長にどう説明するかなんだよなぁ。
皆の所に戻ると、予想通りムカイ団長が詰め寄ってきた。
「福田さん! どういう事ですかな?! そのアリと知り合いなのですか?! 王様とは?!」
う~ん、予想通り。
納得してもらえる説明が出来るのかな?
まず、アリの王様が従魔と言って大丈夫なのか?
俺が団長の立場だったと仮定しよう。
そうだとすれば、アリに命令を出してもらって人間を攻撃しないように頼むと思う。
だが、それではダンジョン内で冒険者に殺される可能性もある。
周知させてても、「モンスターだから」とドロップ品狙いで殺されるかもしれない。
俺からすれば人間もアリも殺されたくない。
でもそれを俺が決める事が出来ない。
この国は王様に話せば何とかなるかもしれないが、他の国は無理だろう。
そもそも、人間とモンスターだ。
個人では大丈夫かもしれないが、単位が大きくなると無理だと思う。
話は逸れたが、どう説明するか……。
悩みに悩んで、結論出ず。諦めました。
「福田さん! 説明を!」
「え~、アリの王様と知り合いなんですよ。俺とソックリなんですよね~。ハハハハ!」
「……そうなのですか?」
「……そうなのです」
とにかくこの無茶苦茶な理論で押し切ろう!
「お陰でアリには襲われないんですよ。ラッキーですよね~」
「……そうですか」
「……そうです」
納得出来ないようだ。
まぁそりゃそうだろうな。
でも、押し切っちゃうぞ!
「言う事を聞いてもらえるのですか?」
「ええ。ただ、出会ったアリ限定ですけどね。全てのアリには無理ですよ?」
「……うむ。……判りました」
「判ってもらえましたか」
色々と熟考されてたが、何とか納得してもらえたようだ。
まあ納得してないと思うけどね。
俺の事情を考慮してくれたのだろう。
こういう察しの良い人って助かるわ~。
折角なので、アリにダンジョンを案内してもらう事にした。
ナビがあるので道は知ってるけど、助かってる。
何故かと言うと、ナビには表示されない事を教えてくれるからだ。
セーフティーゾーン、水の汲める所、等々。こういうのは表示されないんだよな~。
このナビは、色々イジってみたが書き込むとかは出来ないようだ。
まぁ、道の変わる迷路なので書いても意味無いかもしれないが。
そのナビだが、黒い点が大量に発生しこちらに向かってきてる!
どういう事だ?! モンスターハウスに入ってしまったのか?!
アリの案内は罠だったのか?!




