初仕事
普段使わない権力だけど、恐ろしい程の効果だったなぁ。
ここがニーベル国で、その国の大臣だから? ギルドのランクが上だから? ヌマタ卿と知り合いだから?
……なんだろう、最後のが一番強力な気がする。
他愛も無い事を考えてる内に、タルーンさんの店に到着した。
タルーンさんは留守だったが、勤めている人が俺を知っていた。
用件を話すと快諾してくれたが、ちょっと応接間に来て欲しいと言う。
付いて行くと、部屋に入るなり鍵をかけて話しかけてきた。
「福田様、主より依頼がございます」
「ん? ああ、そうでしたか。でも鍵をかけるほどの事ですか?」
「はい。これは内密にとの厳命でしたので」
「そ・そうですか。で、内容は?」
「これからお持ちする武具を、カジノの町に運んでもらいたいのです」
あぁ、頼まれる事が無くて忘れてたけど、運搬業の話ね。
一瞬で運べるし、途中の税もかからないし、道中に盗られる事も無い。
早い・安い・安全、と三拍子揃ってる。
ちょこちょことタルーンさんの店には来てたんだけどね(どこかに繋ぐ時に、先に繋いでチラッとボードを見て帰ってた)。
初めての依頼だ!
「判りました。では物置まで運んでもらえますか?」
「物は確認しなくて良いのですか?」
「ええ。壊れないように梱包しておいてください。後、物置はちゃんと施錠してくださいね。
それと、悪いのですが、カジノの町の私の家まで取りに来て下さいとお伝え下さい」
「は・はぁ、判りました……?」
どうやらタルーンさんは、この人に『コネクト』の事を教えてないようだ。
信頼出来る従業員だろうと、約束は守る。その姿勢には感服するね!
従業員の人は不思議に思いながらも、こちらの指示通り木箱に入れて梱包してくれた。
そしてそのまま物置に運んでいった。
「言われた通りにしておきました。よろしかったでしょうか?」
「はい。問題ありません。
ところで、重さはどれくらいでしょうか?」
「武具と木箱を合わせて20kgぐらいだと思います」
「判りました。では承りましたので。こちらからの依頼の件もお願いしますね」
「それは承知しております。……あの~、今日、お持ちになって帰らないのですか?」
「持って帰りますよ?」
「でも物置に……」
「えっと、タルーンさんとの決まりでね。こっそり持って帰る事になっているんですよ」
「はあ……判りました」
顔には納得出来ないと書いてあるわ。
そりゃそうだろうな。俺だって『コネクト』の事を知らなければ、「何言ってんの、この人?」と思うのは確実だ。
でもまぁ納得してもらうしかない。
しかし20kgか。俺でも運べるな。
60kgとか言われたらムカイ団長を呼ぼうかと思ってたわ。
俺はタルーンさんの店を後にし、裏へ回って庭から物置へ。
これもタルーンさんと決めてたルートだ。
庭に入る門扉の鍵も預かっている。当然物置の鍵も。
物置に入り、中から鍵をかける。
早速『門』をカジノの町の家まで繋ぎ、そこに木箱を運ぶ。
丁度メイドさんが居たので、「タルーンさんかその店の人が来たら、この木箱を渡すように」とお願いしておいた。
そのままカジノの町の家から、王都の町の家まで帰る。
最後にタルーンさんに『メール』だ。
『武具運搬承りました。もうカジノも町の俺の家まで運んであります。すみませんが取りに来てください。
何かありましたら、王都の家に来てください。夜には居ますので』
これで、ミッションコンプリートだ!
『メール』で長文を送ったが、無事に送れたようだ。まぁ、失敗したらどうなるのか知らないけどさ。
あっ、料金を決めてなかった!
俺の依頼とで相殺すれば良いか。
いや、もし狼のドロップ品が高かった場合、俺の運搬費が高い事になるな……。
もういいや、お世話になってるし。初回限定無料って事で!
今なら何と! もれなく、ドラゴンのダンジョンご招待! って感じで!




