死者管理施設
トムさんは部屋を飛び出し、前にイイクラさんが居た場所に移動するエレベーターのある小屋に移動した。
俺は慌てて追いかけたので、離されながらも何とかそこに到着出来たのだった。
「ちょ・ちょっと……待って……くださいよ……ゼイゼイ」
「ん? あぁ! ごめんなさいね!」
「いや……良いんですけど……せめて行き先……くらいは……言って欲しかったで……す」
「ゴメンね? ここは知ってると思うけど世界の死者を管理する所なの。
そういう所は点在してるのだけど、実はタローの居る所もそうなのよ」
「えっ?! そうなんですか?!」
やっと呼吸が落ち着いてきた所で、トムさんから驚きの事実を明かされた。
前に1箇所ではないと聞かされてたが、まさかこんな近くにあろうとは!
「ニーベル国は、この大陸の中心辺りにあるので便利なのよ。
で、強力なボスが居て攻略されてないダンジョンは、管理する所と思ってもらって良いわね」
「じゃあ、ミノタウロスのダンジョンもですか?」
「そうよ。私の所が北を、タローが西を、ジローが東を。
そしてカジノの町の南にあるユニコーンのサキちゃんが居るダンジョンが、南を管理してるわ」
「そうなんですか」
「えぇ。他の大陸は、その大陸にあるダンジョンに管理施設があるのよ。
なので、ココには死者は来ないわね。
ちなみに海は、ある島国にあって、そこで一括管理してるわ」
「へ~。で、ここに来た理由は?」
「ここなら、直接他の管理施設に行けるのよ。
福田君の『コネクト』が常時稼動してると思ってもらえば良いわ」
なるほど。
つまりトムさんは、タローの居る所に乗り込むという事ですか。
タロー、早く解放しないと、死神がやってくるぞ?
「って事で、福田君は悪いけど帰ってもらえないかしら?
さすがに福田君は連れて行けないのよ。多分だけど。
それに、行っても面白く無いと思うし。
あっ、すぐに解放させるから、行く準備してても良いかもね!」
「そういう事なら、帰りますよ。
解放、よろしくお願いしますね」
「任せておいて。封鎖したり居留守使うような臆病者には、制裁、いや教育してくるから」
「……」
死者の管理をする所を守ってるタローさん、貴方が死者になって行くなんて笑い話にならないようにね。
まぁ、同情はしないけどさ。食い物の恨みは忘れてないからな。
俺はトムさんの家に戻り、『門のシール』を貼った場所に行く。
鍵が開けっ放しで無用心だと思ったが、他に誰も居ないので関係無いなと考え直した。
『コネクト』を使い皆の所に戻ると、ミーちゃんが腕立て伏せをしていた……。
どういう状況? いや、なんとなくは判るんだけどさ。
「おぉ、戻られたか。
ん? これかね? 皆で周囲の警戒をしてたのだがね、こやつがサボっておったのでな。
罰として鍛錬させておるのだよ」
「あっ、そういう事ですか。了解で~す」
「軽く……了解して……ないでさ……止めて……もらえない……かな?」
「頑張れ!!」
止める訳無いじゃん。応援はしてあげるよ。
まぁ、移動するから後30回くらいしたら止めて貰うけどね。
皆に「多分もう少ししたら解放されると思う」と告げて、腕立て終了待ち。
15分後に終わったので町に戻る。
先に宿を取りに行く。馬車が無いので、宿を取らないと安心して家に帰れないからね。
今解放になっても行くのは明日だよね。もうすぐ夜になるから。




