ステージ上は混迷
「はい、帝王さん! 挨拶をお願いしま~す!!」
何この羞恥プレイ。
イジメですか? イジメですよね?!
グイグイとマイクを押し付けてくるお姉さん。
「え~、何故か紹介された福田です」
その途端、帝王コールが始まった!
中には「金返せ!」「帰れ!」「ハゲろ!」「モゲろ!」という声も混じっているが……。
「帝王さん、もっと何か盛り上がる事言ってくださいよ~」
何このお姉さん!! ムチャ振りばかりしてくるよ~!!
え~い、なら言ってやろうじゃないか!!
「俺は宝くじを11枚持ってるぞ! 全部『ぬ』だからな。
だから『ぬ』が出たら、全員諦めろよ!!
特に1等と3等は狙ってるからな!! 地獄に落としてやるぜ!! ゲハハハハ!!」
……調子に乗りすぎました。
でも会場はかなりヒートアップした。
これで満足だろ? お姉さんよ?!
「ちょっと言い過ぎですね~。面白くなくなるから、全部当てるのは止めてくださいね~」
ヒドイ!! 俺頑張ったのに?!
チラリと仲間を見ると、二人揃って笑いを堪えてやがった……。
よし、同じ舞台に上げてあげようじゃないか。
二人を見ながらニヤリと笑う。
するとキジマさんは察したのか、ひたすら頭を下げている。
よし、キジマさんは許そう。だがカンダは犠牲になってもらうぞ?
「司会のお姉さん、あそこに俺の仲間のブルーが居ます。呼んでも良いですかね?」
「えっ? あ~本当だ~! ブルーさん、ステージへどうぞ~!」
カンダさんは予想通り固まった。だが、周囲の人間の神輿作業によってステージに運ばれてしまう。
キジマさんはとっさにしゃがんで隠れたようだ。
「はい、ブルーさん登場で~す! 一言お願いしま~す!」
ほれ、俺を笑ったのと同じ状態だぞ? 気の利いた事を言ってあげなよ。
「……い…………」
「い?」
「依頼主の勇姿を見て! 感動で震えてただけなのに!
変な名で呼んでステージに上げてさらし者にし! さらに何かを言えと言う!
正に! ゲスのきわ『言わせね~よ!!』」
お前はハマ○ーンか?! カンダだからか?! あれっ、言うのはカンダだったっけ? 相方だったっけ?
それよりも! 今はそれを言ってはいけない気がする!!
とあるバンドを思い出すから!!
「はい! ヤバい気がする一言頂きました~! 自重してくださいね~! では抽選に入りま~す!」
お姉さん、プロだな! さらっと流したぞ!
「不正の無い様に、観客の中から抽選する人を決めま~す!
まず最初は5等の抽選をするので、帝王さん、適当に二人選んでくださ~い!」
なるほど。適当に選んだ人が抽選するなら不正のしようが無いって訳ね。
俺は最前列にいた2人の薄い人を選んだ。何が薄いかは内緒だ。
タカシとツカサという名前だそうだ……。
ステージにはボタンが4個あり、2個がスタートボタンで2個がストップボタン。
2対になっており、それぞれが文字と数字の球体と連動してるそうな。
まずはツカサがボタンを押し、文字を決定させた。
「はい、出ました~! 文字は! 『さ』で~す!」
観客は動揺している。
俺の持っている宝くじの『ぬ』じゃないからだろう。
俺は5等には興味無いのです。スルーです。
こんな所で運を使ってる場合じゃありません。
そんな事を知らない観客は『さ』を引いたツカサを賞賛している。
ツカサは気分が良くなってきたようで、マイクを持っていた。
「これくらい当たり前だろ? 俺を誰だと思ってるんだ? 『ツカサ』さんだぞ?」
ネタはいいから、はよ次にいけよ!!
はい、お笑い好きなんです…。




