馬車屋
カンダさんの実家は『交易の町』なんだってさ。
キジマさんの実家は温泉があった所よりさらにサイラス国に近づいた辺りの村だそうだ。
丁度良いじゃないか。全てカジノの町の北側だ。温泉もね。
予定としてはこうだ。
全員でハガタの町に向かう。ここにはドラゴンのダンジョンがあるからだ。
そこで別れて、カンキジコンビは『交易の町』へ向かう。
そのまま新婚旅行に突入だよ。
俺達はそのままダンジョン攻略する。
カンキジコンビは俺の馬車を使って、『交易の町』とキジマさんの実家に行く。
その後、温泉地で逗留してもらう。
俺達がダンジョンから出るくらいにハガタの町に戻ってきてもらう。
うん、完璧だ!
と思ってたら、ナグラさんから問題点を指摘された。
「同行するっていう騎士はどうするのよ?」
ワォッ! すっかり忘れてたぜ!
悪いけど、自力でハガタの町まで来てもらうか?
あっ、『コネクト』の事は教えるって言ってたな。迎えに行けば良いのか?
そうしよう。その方が早いだろ。
人選に間違いは無いと思うが、城で会った方がチェンジ出来るだろうしね。
向こうにも都合があるだろうから、明日って訳には行かないだろう。もう18時だし。
良し、明後日だな。
明日は旅行の準備をするとしよう。
って事で翌日。
カジノの町は買い物に向いてないので、王都の家に『コネクト』で移動した。
今日は色々な物を買って、マジックボックスに入れておこうと思ってる。
主に帰り道で消費した食品を買おうと考えている。
イチゴも大量に買っておきたい。
コレは俺と同じく好物な人や従魔が多いからね。
特にレイにはカンキジコンビの護衛の仕事があるからね。
俺が居ないとなると、キジマさんが持っている異次元のカバンが頼りだ。
う~ん、馬車の中に異次元のカバンのような収納場所が欲しいなぁ。
そうだ! 馬車屋に行ってみよう!!
で、やってきました、馬車屋さん!
買い物は終わってからなので、時間にも余裕があるぜ!
馬車屋さんは、ギルドマスターに紹介してもらいました。
冒険者は馬車をよく使うからね。詳しいんじゃないかと思って尋ねたんだよ。
そしたら、簡単に教えてくれました。
「こんちは~」
「ようこそ! 王都馬車店へ!」
「ちょっと聞きたいんですけど~」
「なんなりとどうぞ!!」
何かノリノリだな、この店長。
何でなんだろう? コレが普通なのかな?
「あの~、何でそんなテンションなんですか?」
「うちの店は貴族がオーナーなのですよ。なので福田様の事はよく知ってますよ!!」
「マジですか……」
どうやら、俺は王都でひそかに知られているようだ……。
何かヤダなぁ。貴族が知ってるってなると、トムさんとガー絡みだもん。
不手際があれば暴れるとか思われてないだろうな?
「あのですね……馬車を改造したいのですけど……」
「はい! どのような改造でしょうか!」
「え~と、魔法道具で『異次元のカバン』ってありますよね。ご存知ですか?」
「はい! 存じております!!」
「そういう機能を馬車に付けたいと思ったのですが。そんなのってありますかね?」
「ございますよ!!」
「そうなんですか?! すぐ出来るのでしょうか?」
「はい! うちの店は迅速がモットーですから!!」
「ちなみにお値段の方は?」
「無料でございます!!」
「えっ?」
「無料でございます!!」
「えっと……何で?」
「オーナーの意向でございます! オーナーの名前『マカベ』、これを覚えて頂ければ、無料でございます!」
あぁ、名前を売りたいのね。
マカベね。それを覚えれば良いのね。それだけでタダになるなら簡単だ。
覚えた所で、何にも役に立たないけどさ。




