共犯
城から手配された馬車は待っててくれたので、それに乗ってまた城へ。
もう王様に用事は無いので、さっさと『コネクト』で帰る。
見つかると煩そうだからね。
お陰で昼までかからずに帰ってこれた。
次の予定の、「トムさんから話を聞く」を実行しようと思う。
いつもタイミングが悪いので、今回はこちらから行きたいと思う。
『後30分したら、そちらに向かいます。そんなに長居はしないのでお願いします』
この内容でメールを送った。
今思ったが、従魔とは念話が出来る。
でも近くにいないと繋がらないんだよね。
距離が関係あると思うんだよ。
で、ホウズキさんが使える魔法の『念話』。あれは距離は関係無いのだろうか?
今度行ったら聞いてみたい。
というよりも、早く覚えたいわ。で、実験したい!
中級魔法の本もあるけど、読んでないんだよなぁ。
何故かヒマが無いんだよ。
いや、ヒマは作る物だよね! ダンジョンに行ったら、実験も出来るしそこで読むとしよう!
あっ、でも『念話』って出来たばかりっぽいから載ってないかも……。
おっと、ぼーっとしてたら30分経ったな。
ではトムさんの所に行くとしよう。
トムさんの所に行くと、仁王立ちのトムさんが居た……。
おかしいな、今回は何も無いハズなんだが。
「いらっしゃい」
「そんなドスの効いた声で言われても……。何か問題が?」
「ちょっとここの人達と観劇に行く予定でね」
「あぁ、じゃあまた後日来ますよ」
「イイクラさんに『福田さんが用事があるなら、トムさんは残っててください。終わったら合流しましょう』って言われた。
確かに知っているし何度も見た劇だけどさ。途中から見るのは違うよね?
でもイイクラさんに言われると断れないのよ。ある意味雇われてるようなものだから。
このタイミング、どう思う?」
「え~と、偶然ですね」
「偶然で終わらせるには、こういうの多くない?」
「呼ぶより良いかなと思ったんですけど……」
「今回の場合、どちらでもアウトよ。と言うか、常にアウトだと思うのだけど。
お風呂に入ってる時に呼ばれるのも来られるのもね」
「まぁ、確かに」
「貴方が運が高いのは知ってるわよ? でもおかしくないかしら?」
「イイクラさんは何か言ってましたか?」
「聞いてみたわよ。そしたらこっちみて笑っただけだったわ……」
さては何か知ってるな?
よし、俺も聞いてみよう。何か秘密があるかもしれない。
それが運に関わる事なら重要な事だしね。
「で、今日は何よ?」
「聞きたい事があって来たんですよ」
「私に聞きたい事ねぇ。ま、良いでしょう。お茶を入れるからリビングに行きましょう」
リビングに移動し、お茶を貰って落ち着いた所で質問してみた。
「ドラゴンのダンジョンとミノタウロスのダンジョンを調べる事になったんですよ。
どちらもボスの名前が出てると思うんですけど、知ってます?」
「そうね。ドラゴンのダンジョンのボスはドラゴンよ。
ミノタウロスのダンジョンは、当然ミノタウロスがボス」
「やっぱりそうですよね。で、ボスは知り合いだったりします?」
「ええ。両方とも知ってるわよ。
というか、ドラゴンはタローよ。出会ってるじゃん」
「……やっぱり。会えますかね?」
「会えると思うけど、タローは会いたくないんじゃないかしら?」
「それは何故?」
「……知ってて聞くのかしら? それともアレは自分のせいでは無いと?」
「ええ。ダンジョンマスターのせいですよ」
俺がドラゴン(タロー)をヒドい目にあわせた?
心外だ。アレはダンジョンマスターが仕込んだ試練を突破する為に仕方なく、だよ。
恨むのならダンジョンマスターを、そして引き受けた自分を。俺は被害者ですよ。
「何をさらっと、自分は被害者みたいな顔をしてるのかしら……
明らかにアレは過剰防衛だと思うわ」
「そうだと言うなら、協力したトムさんも共犯ですよ?」
「……アレはダンジョンマスターのせいね」
「その通りです」
共通認識でなによりです!
「ミノタウロスの方はどうです? 会えますか?」
「会えないわ! と言うより会いたくない!!」
何やら問題があるようだ。




