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プロポーズ

サガワさんと判っているので、俺が玄関に向かい出迎える。

やはりサガワさんで、揃いの指輪を買ってきてくれた。

ミスリルで出来ているシンプルなデザインで、邪魔にならない物だ。

それどころか、少しだがエンチャント出来るらしい!

正に冒険者向けの指輪だ。


聞くと、この世界には婚約指輪という物は無いようだ。

お互いが同じ指輪を着けるだけらしい。


急遽用意した物なのでサイズは合ってないだろう。

それはエンチャントをする時に直せば良いそうだ。

そうだよ、今は渡して了承してもらう事が重要なんだから。


サガワさんとは、明日また会う約束をしてここで別れた。

俺は受け取った指輪を、こっそりとカンダさんに渡す。

ナグラさんは気づいたようだが、空気を読んで黙っててくれた。

さあ、男を見せろ! カンダさん!


「結婚してください」

「はい」


……簡単だな!!

で、それで良いのかよ!!


俺だけでなく、ナグラさんもそう思ったようで唖然としている。

先に再起動したナグラさんが、二人に文句を言い出した。


「ちょっと! そんな簡単で良いの?!」

「いや、こんなもんでしょう?」

「目標の家も手に入れたので「あぁ、結婚するんだな」と思ってましたから」

「そうだけどさ! カンダさんはもっとサプライズしないの?!」

「えっ? バレてるのに必要ですか?」

「そういう問題じゃない!!」


カンキジコンビとナグラさんの言い合いを見てたら、横からコタニさんが話しかけてきた。


「ナグラさんは何を言ってるんスか?」

「あぁ。プロポーズはもっと華やかにしろって事じゃないかな」

「でもあんなものっスよ?」

「どういう事?」

「冒険者は常に危ない所に行くので、プロポーズ出来る時にすぐするのが大事なんスよ」

「あ~、そういう事ね」

「最近はそれが流行ってきて、普通の人もさらっとするのが良いってなってきてるんス。

 逆に何か凝ってプロポーズすると引くっスよ」

「引くんだ……」

「まだ結婚は早いって思ってるのに、凝ったプロポーズされたら困るっスから。

 男女とも断られても良いように、さらっとするのが良いんスよ」


なるほどね~。

世界が変われば恋愛観も違うか。


「でも、今回の場合さ、多分断らないじゃない?

 だったら凝ってても良かったんじゃない? ここは安全だしさ」

「人が見てる前で凝った事をするのは古いっスよ?

 そんなのしたらキジマさんは間違い無く引くっスね。

 ヘタしたら断るかも知れないっスよ?」


そうなんだ……。

じゃあ怒ってるナグラさんの方がおかしいんだ。


「もし、今文句を言ってるのが福田さんなら、結婚しない方向になってたっスね」

「えっ?! 何で?!」

「雇い主っスから。

 雇い主から苦情が出るなら、仕事を辞めるか結婚を止めるかしか無いっスよ」


危なかった! もう少しで俺も言う所だったぜ!

助かったので、そろそろナグラさんを止めてあげよう。


まだ文句言ってるナグラさんを捕まえて、さっき聞いたのを教えてあげる。

事情が判ったので大人しくはなったが、まだ納得はしてないようだ。

まぁ、前世で17歳とかなら、結婚に夢見てるよなぁ。

そこは残念だが諦めてもらうしかない。


ま、なんにせよ、無事にプロポーズ出来て、しかも受けてもらったので良し!

あれっ? なんでキジマさんは俺を睨んでるのだろ?

あっ! カンダさん! 住む家の事をバラしたな!

俺が魔改造しようとしてるって言ったな!

違うんですよ、快適にしようと思ってね……フュ~フュ~

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