上級
帰り道だが、来る時と同じ様に小さい村を行商しながらにした。
前回もこの馬車が通ったのを覚えてたのか、どの村でも歓迎された。
今回は王様から貰った手形もあるし、堂々と商売出来るわ。
その為の手形では無いのだけど、誰かから文句を言われたら出してやろうと思っている。
帰りは何処にも道草しなかった為に、国境まで4日で到着した。
運も多少使ったので、何も邪魔する者が居なかったってのもあるだろう。
お陰で、もっとゲームブックを書けと言われずに済んだよ。
後はゆっくり進んでも3日で王都には着くだろう。
で、早速ダンジョンに……。
なんて考えたが、急遽予定を変更してカジノの町に来てます。
依頼? 知らん知らん。あの王様なんか待たせておけば良いんだよ。
待たせた挙句に、孫は居ない。とても面白いじゃないか。
さて、何故カジノの町に来たのか。
それは帰っている途中での、会話の中に理由がある。
会話と言っても、俺が少し寝てた間に行われてたガールズトークなんだが。
目が覚めても会話が続いてたので、悪いと思いつつも盗み聞きしてたんだ。
その時にコタニさんが、キジマさんはカンダさんと何時結婚するんスか?と質問してた。
それを聞いて思い出したんだ。
二人がカジノの町に来た理由を。
確か、ガチャで家を当てたら結婚してそこに住むのだと言っていたハズだ。
そしてウエダさんとの会話。
上級者ガチャでは家も当たると言っていた。
これを狙ってたんだろう。
だが、上級者を引くには、ある程度初級者用と中級者用をやってないとダメだとも聞いた。
で、思い出したんだよ。
シキメとの賭けで、上級者ガチャを引く権利が後1回残ってる事を!
これで当ててもらい、結婚させてあげようじゃないか!
雇い主からのプレゼントだよ!
ちなみに二人には何も話していない。
というか、俺が思いついただけで、誰にも話してない。
ただ「カジノの町に寄り道して行こうよ」と伝えただけだ。
問題点もある。
二人に現状で家が必要か?という事だ。
二人とも俺の持ち家に部屋を持っている。
雇い主の俺は、基本的にアッチコッチにうろうろしてる。
こんな状態で、家なんか必要なのだろうか?
いや、必要だろ!
結婚したら当然子作りもするだろ。
こんな、ある意味家族と同居のような環境じゃダメだろ!
本人達も、ついでに俺達もなんか恥ずかしいわ!
それに子供が出来たら?
子連れで出勤か?
いや、そこに文句は無いのだが、赤ん坊連れてダンジョンは無理だろ。
待機するにしても人の家じゃ落ち着かないだろう。
うん、やっぱり家は必要だね!
って事で、ガチャの店までやってきました!
店の前で皆に説明する。
「って事で上級者ガチャをやります!」
「覚えてたんですね……」
「もうどうでも良くなってたんですけど……」
「何言ってんだよ。何時までも俺と一緒に居たら結婚なんか出来ないぞ!」
「そうっス! チャンスっス!」
「そうよね~。そんな約束してたのなら、ちゃんと果たさないと」
「わ・判りました……」
おっ、カンダさんは覚悟を決めたようだ。
かっこいいね! モゲロ!
「さて、俺には上級者ガチャを引く権利が1回だけある。
それをカンダさんに譲るから、1発で当てて来い!!」
「はぁっ?!」
大丈夫、俺が後ろで運を使うからさ!
俺が当ててプレゼント、じゃあかっこ悪いだろ?
自力で当ててプロポーズだ!!




